睡眠時脳波
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/16 08:55 UTC 版)
睡眠段階特徴的波形stage W α波 stage 1 α波の減少、V波(hump) stage 2 睡眠紡錘波(spindle)、K複合波 stage 3 δ波(20% - 50%) stage 4 δ波(50%以上) stage REM 低振幅脳波に急速眼球運動(REMs)が出現する 中脳網様体―視床―皮質の連絡によって波形の成り立ちは説明される。睡眠が深くなると中脳網様体、視床、皮質の順に求心性支配が順次減少すると考えられている。突発波と誤りやすいものに睡眠第一段階で認められるhumpが知られている。入眠時はα波がほとんど消失するためhumpの場合は後頭部にα波が認められないといった点などが鑑別の役にたつ。 覚醒段階(stageW) 閉眼覚醒ではα波のほか、高振幅の持続性筋電図、急速眼球運動(REMs)や瞬目もしばしば出現する。このα波は皮質―皮質間の神経路で発生すると考えられている。 睡眠第1段階 まどろみ期、入眠期といわれる。うとうとした状態である。覚醒時に認められたα波の連なりはリズムを失い徐々に平坦化してくる。低電位の徐波、即ちθ波が不規則に出現しβ波も混ざる。α波が覚醒期の50%以下になると睡眠第1期とする。第一段階の後半になると頭蓋頂鋭波(humpまたはV波)が出現する。頭蓋頂鋭波は左右頭頂葉優位の鈍く尖った高電位の徐波である。中脳網様体からの視床や皮質への求心性入力が減少することでα波の形成は減少すると考えられている。 睡眠第2段階 軽い寝息を立てるくらいの状態である。睡眠紡錘波(spindle)とK複合波(K complex)が出現する。睡眠紡錘波は頭頂部に出現する12Hz - 14Hz程度の波形である。K複合波は頭蓋頂鋭波に似た二相性ので高振幅の徐波とそれに続く速波で構成される複合波である。睡眠紡錘波は網様視床核がペースメーカーとなり、それが皮質に投射される、視床―皮質回路で形成されている。中脳網様体の求心性入力が減少することで視床―皮質の神経路が独立性を持ち睡眠紡錘波を形成するようになる。 睡眠第3段階 2Hz以下で頂点間振幅が75μV以上の徐波(δ波)が、20%以上50%未満を占める段階である。かなり深い睡眠であり、よほど強い刺激でないと知覚されない。通常の脳波検査ではこの段階までいくのは稀である。第3段階と第4段階を合わせて徐波睡眠という。視床からの求心性入力が減少することで皮質が独立性をもち多形性のδ波を形成する。 睡眠第4段階 2Hz以下、75μV以上の徐波(δ波)が50%以上を占める状態である。 REM睡眠 上記の睡眠段階は主にノンレム睡眠である。レム睡眠は脳波に睡眠第一段階に類似した低振幅パターンが出現すること、急速眼球運動(REMs)が出現すること、身体の姿勢を保つ抗重力筋筋緊張低下を三徴とする。脳波のみでは睡眠第一段階とレム睡眠の区別は困難である。ナルコレプシーの患者では覚醒時から急速にレム睡眠に移行する。また、レム睡眠中に刺激を与え、起こすと夢を見ていたと述べることが多い。
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