眠る男
『丹後国風土記』逸文 水の江の浦の嶼子(=浦島)が、釣り上げた五色の亀を船中に置いて眠る。目覚めると、亀は美女に化しており、嶼子を蓬山(とこよのくに)へ誘う。
*アダムは眠りから目覚めて、エバ(=イヴ)の存在を知る→〔骨〕1aの『創世記』第2章。
『オデュッセイア』第6巻・第13巻 トロイアから故国イタケ島へ帰還するオデュッセウスは、船の難破でパイエケス人の国に漂着する。疲労して川辺で熟睡する彼を、王女ナウシカアが見つける(*→〔洗濯〕1)。オデュッセウスは国王の宮殿で歓待され、それまでの冒険譚を語る。パイエケス人は、オデュッセウスを船に乗せてイタケまで送る。オデュッセウスは船中で熟睡し、目覚めた時にはイタケの浜辺にいた。
『ギルガメシュ叙事詩』 ギルガメシュは永遠の生命を求めて、死の海の彼方、ウトナピシュティムの住む地へ行く。しかし、「6日6夜眠らずにおれるか」とのウトナピシュティムの言葉を聞いた途端、ギルガメシュは長い眠りにおちる。目覚めて、すでに6日たったことを知らされたギルガメシュは、死を間近に感じ、恐れる。
『百合若大臣』(幸若舞) 唐と日本の潮境・ちくらが沖で、蒙古の大船団と百合若大臣の軍が戦う。百合若大臣は敵を撃破した後、疲労して、玄海が島で3日3晩眠る。家来の別府兄弟が、眠る百合若大臣を島に置き去りにして、軍兵ともども筑紫の博多へ帰還する〔*3年後、百合若大臣は釣り人に救われて筑紫へ戻り、別府兄弟に復讐する〕。
*→〔熊〕1の『古事記』中巻(カムヤマトイハレビコ=神武天皇)。
*3年3ヵ月寝て暮らした男→〔交換〕6bの厚狭の寝太郎の伝説。
★3.眠る夫を殺そうとする妻。
『黄金のろば』(アプレイウス)巻5 姉たちから「お前の夫の正体は大蛇だから殺せ」と言われたプシュケは、剃刀を握り、暗闇の中、眠る夫を燭台の明かりで照らし出す。彼女はそこに美しいエロス(クピード)の姿を見出して驚き、夫の顔をさらにのぞきこもうとして、燭台の油を彼の肩に落とす。エロスは目をさまし、怒って飛び去る。
『古事記』中巻 兄サホビコが、妹サホビメに「汝の夫・垂仁天皇を殺せ」と命ずる。サホビメは、眠る垂仁天皇に紐小刀(ひもかたな)を3度ふりあげるが果たさず、彼女の涙が天皇の顔に落ちる。垂仁天皇は目覚めて、「不思議な夢を見た。沙本(さほ)の方から俄雨が降って来て、私の顔を濡らした。そして、錦色の小蛇が私の首に巻きついた」と語る〔*『日本書紀』巻6垂仁天皇5年10月に同記事〕。
『人魚姫』(アンデルセン) 人魚姫は、沈む船から王子を救い出すが、王子は後に人魚姫に会っても、彼女が命の恩人と気づかない。王子は隣国の王女を恩人と思い込んで結婚し、人魚姫の恋は報われない。姉たちが人魚姫に短刀を渡し、「王子を殺して人魚の世界へ戻って来なさい」と言う。しかし人魚姫には王子を殺すことができず、彼女は短刀を投げ捨て海にとびこんで、泡と化す。
★4.眠る夫を、眠る妻が殺す。
『旧雑譬喩経』巻上-33 大臣が、占い師から「武器で命を落とすでしょう」と宣告された。大臣は兵士に護衛を命ずるとともに、自らも手に剣をかまえて警戒する。夜が来て眠くなった大臣は、妻に「これを持っておれ」と言って剣を渡し、横になる。しかし妻も眠り込んでしまって剣を落とし、大臣の首を切断した。
固有名詞の分類
Weblioに収録されているすべての辞書から眠る男を検索する場合は、下記のリンクをクリックしてください。

- 眠る男のページへのリンク