直木賞受賞・私小説家廃業
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「車谷長吉」の記事における「直木賞受賞・私小説家廃業」の解説
1998年、自身初の長編『赤目四十八瀧心中未遂』を上梓する。会社員生活をドロップアウトして、尼ヶ崎のはずれの吹き溜まりの街に流れ着き、焼き鳥屋のモツの串打ちの下仕事をする男と、背中に迦陵頻伽の刺青を背負った謎めいた女との逃避行が描かれた。本作で第119回(1998年上半期)直木賞を受賞 する(本作は、伊藤整文学賞にも内定したが、伊藤整との文学観の違いから、受賞を拒否している)。主人公の身の上は車谷自身を思わせるが、九割までが架空の話であるが、料理人時代に実際に姦通した三人の女との体験を「藝のこやし」にしたとしている。 2000年、武蔵丸と名付けた兜虫と暮らす夫婦の日常生活を描いた短編「武蔵丸」(『白痴群』所収)を発表して、翌年第27回川端康成文学賞受賞する。2000年10月末西武セゾングループを退職する。2002年、1983年の東京への帰還までの自身の前半生を題材にした長編『贋世捨人』を発表する。2003年、『赤目四十八瀧心中未遂』が寺島しのぶ主演でに映画化される。 2004年4月、『新潮』(2004年1月号)掲載の私小説「刑務所の裏」(書き直して「密告」と改題、『飆風』所収)で事実と異なることを描かれ名誉を傷つけられたとして俳人の齋藤愼爾に提訴され、同年12月に齋藤の申し立てをのみ和解し、同時に「凡庸な私小説作家廃業宣言」(『雲雀の巣を捜した日』所収)を発表する。以降は、私小説を離れて、史伝小説や掌編小説、聞き書き小説などに創作の軸を移した。 2010年、新書館より『車谷長吉全集』全三巻が刊行された。2015年5月17日、妻の留守中に、解凍済みの生のイカを丸呑みしたことによる窒息のため死去する。2017年、高橋順子による回想録『夫・車谷長吉』が出版された。
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