発光の機構
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/08/31 02:05 UTC 版)
発光バクテリアの発光に与る酵素は、ホタルなどの他の発光生物同様、ルシフェラーゼという名称がつけられているが、そのアミノ酸配列や発光メカニズムは異なっている。一部の発光細菌では、ルシフェラーゼを産生する際、菌体数がある濃度を超えている必要がある。このように、物質の産生に関して、密度依存性がある機構をクオラムセンシング (quorum sensing) という。光る、という非常にわかりやすい特徴から、発光バクテリアでこの機構が発見されたが、発光バクテリアだけでなく、様々なバクテリアで見られる。 発光バクテリアの中でも、発光強度が高いものではPhotobacterium phosphoreumが挙げられ、波長は475nm、つまり青色に発光する。一方で、Vibrio fischeri Y-1株は最大発光波長 535nmと、黄色に発光する。この発光色の変化は、発光酵素であるルシフェラーゼそのものの違いではなく、ルシフェラーゼによる発光反応に介在するアクセサリータンパク質(Photobacterium phosphoreumではルマジンタンパク質(LumP)、Vibrio fischeri Y-1株ではYFPと呼ばれる蛍光タンパク質)によるものと考えられている。 既にバクテリアルシフェラーゼの結晶構造は決定されている(1996年)。この報告から、ルシフェラーゼはαサブユニット(約40kDa)とβサブユニット(36kDa)からなるヘテロダイマーを形成しており、それぞれ独立した(beta/alpha)8バレルドメインを有している事がわかった。αサブユニットとβサブユニットは、アミノ酸レベルでの同一性が、40%程度と非常に高い。そのため、3次構造も互いに非常に似ている。遺伝子組み換えにより大腸菌にβサブユニットだけを大量に発現させると、βホモダイマーを形成し、αβヘテロダイマーと同じような構造をとることが報告されている。しかしβサブユニットだけのダイマーでは発光能を有さず、その機能的役割については不明のままである。 一方で、2001年に、分子モデル計算と変異体の機能解析より、活性中心がαサブユニットに存在すると提案されている。そして2009年に、FMNとの複合体結晶構造解析が報告され、αサブユニットにFMNが結合、つまり活性中心が存在することが証明された。しかしながら、もうひとつの基質である脂肪族アルデヒドの結合部位の特定は、少なくとも結晶構造学的手法ではなされていない。 発光バクテリア種間では、ルシフェラーゼのDNA配列、およびアミノ酸配列は非常に似ており、その高次構造もまた同様のものだと考えられている。しかし現在のところ(2009年時点)、結晶構造が明らかとなっているのは、V. harveyi由来のルシフェラーゼの構造のみである(αβ、ββ、αβ+FMNの3種の構造において)。
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