病名呼称の歴史
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/03 01:09 UTC 版)
19世紀には原因は不明であり、認知症が早期に発症したものと誤解されたため早発性痴呆という名称がベネディクト・モレルによってつけられ浸透した。古代ギリシア語の σχ?ζειν+φρ?να(分裂+理性、心)に由来する、ドイツ語の Schizophrenie という言葉が作られた。 日本では、明治時代に精神分裂病が、ドイツ語の Schizophrenie に対する日本語訳として用意された。精神分裂病の「精神 (phrenie)」は、本来は心理学的な意味合いで用いられた単語であり、知性や理性を現す一般的な意味での精神とは意味が異なる。また、「分裂 (schizo)」は、精神そのものの分裂を言うのではなく、「太陽に対して暑い」などの言語連想の分裂を指していた。ところが日本では、「精神分裂病」という名称から、文字通り「精神が分裂する病気」と解釈され、さらには「理性が崩壊する病気」と誤った解釈がされてしまうことが多々あった。 統合失調症の患者の家族に対して、社会全体からの支援が必要とされておりながら、誤った偏見による患者家族の孤立も多く、その偏見を助長するとして患者・家族団体などから、病名に対する苦情が多かった。また、医学的知見からも「精神が分裂」しているのではなく、脳内での情報統合に失敗しているとの見解が現れ始め、学術的にも分裂との命名が誤りとみなされてきた。そこで、2002年に、日本精神神経学会総会で Schizophrenia に対する訳語を統合失調症にするという変更がなされた。訳出にあたっては、その訳語が当事者にとって社会的な不利をもたらさない原則を加味することや、「病」ではなく「症状群」であるといった指摘がなされた。名称変更にかかった費用の一部は、治療に使われる抗精神病薬を販売している外資系企業から提供されたという(全国精神障害者家族会連合会を参照のこと)。
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