画像法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/07 16:45 UTC 版)
これまで述べてきた測定は、吸光とか螢光の変化をシリコンphotodiodeを用いて検出する方法であるが、もう1つの方法としてビデオカメラやCMOSカメラを用いて、光学的変化を画像化する方法が用いられるようになってきた。これを最初に発表したのはBlasdelとSalama (1986)の論文である。BlasdelとSalamaの測定法は、脳皮質の光を照射し、その“reflectance”をTVカメラでモニターするものである。彼らは、サルの視覚野皮質を露出させ、そこをmerocyanine-oxazolone系色素(NK2367)で染色したうえで、サルに垂直、水平スリットの光をみせたとき皮質に誘発される“reflectance”の変化を画像化し、皮質における眼球優位性 (ocular dominance) と方位選択性 (orientation selectivity) のパターンを捉えることができた。これは、ニューロンの光学的測定で新しい局面をひらいたものとして大きな意義をもっていることは確かである。しかしながら、光学的測定という面からみるとき、いくつかの問題は残されている。この論文では、光学的変化は単に“reflectance”と表現されているが、この“reflectance”という表現の意味はそれほど簡単ではない。このような系に対して、“reflectance”を厳密に定義することは難しいが、平面の鏡の場合とは違って、いわゆる拡散反射 (diffuse reflection) という意味に近い。一方、皮質のほうから考えると、それは光を反射、拡散、吸収する粒子(細胞)が不均一に詰まった層でもある。かつ、その散乱は大粒子の多重散乱である。これに加えて、着色系で吸光度の変化がreflectanceの中にどの程度入ってくるかという問題もある。したがって、測定している光学的変化が、皮質のどのような変化を反映しているかを一意的に決めることは難しい。この実験で膜電位感受性色素を用いているということで、ストレートに皮質における電位活動を見ていると結論づけるのは危険であるようにみえる。事実、ここで使われている色素NK2367の活動電位に伴う吸光変化は背景光に対して10-4~10-3 のオーダーであり、ビデオカメラで、それを捉えることはほとんど不可能といってよい。したがって、ここでは、電位活動によって引き起こされた何かほかの現象を拾っているかもしれない。膜電位感受性色素を用いた画像法では、Kauer (1988) も発表している。彼はサンショウウオの嗅球をstyryl系色素 (RH414) で染色し、嗅神経線維を電気刺激して、嗅球での螢光変化(励起波長530nm, 螢光波長610nm)をTVカメラで捉え、画像化した。この実験では対照測定としては膜電位に対して非感受性色素が併用されており、その結果からも、この画像は明らかに嗅球での電位変化の場所的分布を示していると考えられる。
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