玄関網戸と消防法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/25 00:58 UTC 版)
消防法の関連条文 消防法第8条の2の4 は平成13年9月1日に発生した、新宿の雑居ビルの火災を受けて、新たに追加された規定である。 条文の全文は以下。 学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店、旅館、飲食店、地下街、複合用途防火対象物その他の防火対象物で政令で定めるものの'管理について権原を有する者は当該防火対象物の廊下、階段、避難口その他の避難上必要な施設について避難の支障になる物件が放置され、又はみだりに存置されないように管理し、かつ、防火戸についてその閉鎖の支障になる物件が放置され、又はみだりに存置されないように管理しなければならない。 以上斜体の部分がこれにあたるが、前半は、例えば、狭い共用廊下部を塞ぐように玄関扉を開けたままにしておく、自転車などを放置するなど。後半は、マンションには、エレベーターホールの隣などに、非常用階段がよくあるが、ここについている防火扉と、各戸の玄関扉の管理を指している。 関連条文の解釈 管理について権原を有する者の概念第一に、上記太字の管理の実際と管理責任主体を明確化する必要がある。マンションは、上記「その他の防火対象物で政令で定めるもの」の一つと解釈されているが、マンションも賃貸マンションと分譲マンションに二分できる。賃貸マンションの場合は、学校や病院等と同様、その所有者であるマンション全体のオーナーに一元的で直接的な管理義務がある。 一方、分譲マンションに有っては、管理責任範囲が二分されており、共用部は管理組合、又その委託を受けた管理会社に管理権限と管理義務があり、専有部と、共用物であっても個人使用権がある箇所にあっては、マンションの区分所有者に一元的で直接的な管理権限と管理義務は個別に有る。 上記条文にある、『放置』『みだりに存置』の概念消防庁職員も参加している「逐条解説消防法」によると、『放置』とは「ただ漫然と無管理のままで物が置かれている状態」であり、『みだりに存置』とは所有者ははっきりしているが放置に近い状態で置かれているとの意味である。 消防法の対象消防法第8条の2の4の主たる対象は、個人ではなくビルやマンション等の管理者であり、個別各部屋の所有者は副次的な対象である。対象としての玄関網戸の扱いは、以下の通り。 玄関網戸は通常共用部である廊下と居宅を遮断した玄関扉の部屋内の専有部に設置されているので、管理組合には管理権限もなく、当然管理義務は無く、その管理責任者は個人である。 玄関網戸は、玄関扉を開放した条件下で使用されるが、その所有者が明確であるから、玄関網戸が「放置」されていることは無く、且つ、玄関扉が無人の無管理状態、長時間で開放されたままである事は、通常ありえないので、玄関網戸が「みだりに存置」されていることも、通常ありえない。 仮に、無管理状態で、玄関扉が長時間開放されたままであっとしても、玄関網戸の設置と直接の関連はない。 以上、集合住宅にあっては、鉄製の防火扉を取り付けねばならず、また、個々人は、これを、無人・無管理状態で長時間固定的に開放しない注意義務があるだけで、その際、玄関網戸をどのように取り扱うかの規定はどこにも無く、また、一般的な防犯意識さえあるなら、このような状態はありえ無い。ただし、玄関網戸の設置は、玄関扉の開放を前提としているから、そのことにより発生する、美観性や共用廊下部の使い勝手等により、管理組合規則で規制されることはあり得るといえるが、個人の生活上の自由権とも関連するため、その法的根拠の明確化は困難である。
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