独立性をめぐる議論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/16 13:42 UTC 版)
欧州中央銀行は政治的介入を受けずに、独自に業務を行う中央銀行と規定されている。その目的と権限は英米の確執で政治的に妥協して定められたものである。ともかく目標達成のために権限をどのように行使するかについての意思決定は欧州中央銀行自体で行われ、業務上の独立性が保障されている。欧州連合域内の各国の中央銀行の多くはユーロ圏外にあり独立性を有している。デンマーク国立銀行、イングランド銀行にも類似規定が存在する。 経済学者には一致した見解として、独立した地位を持つ中央銀行の存在は政治的目的でマクロ経済の操作を回避するためには最良の手段であるというものがある。他方で、一部の国において中央銀行が独立性も非独立性も有していないことがある。この背景には経済運営上の都合やインフレ阻止のための信頼性確保などがあるが、このような状況でも民主主義の観点から説明責任は存在する(例示すると、カナダ銀行やニュージーランド準備銀行などがある)。 一部では欧州中央銀行の独立性は非民主的なものであるという見方があり、また意思決定の過程や目標に対する批判の声もある。その内容は、欧州中央銀行は連合域内の市民の大多数に対して情報を提供することが少なく、独立した地位を有していることから融通性がなく、また人権侵害や自然環境といった点から貨幣経済をとらえたときのその影響力に関してフィードバックのメカニズムから分断されているというものである。実際、諮問組織からのフィードバックが優先されている。 欧州中央銀行は自身の提唱する案件に関してコメントを発表したり求めるといったことをしていない。自身の行為や決定の発表後でも市民に対して直接意見を求めるといったことをウェブページ上で行っていないのである。内部における会議の詳細も、役員会の内部分裂を隠すために明らかにしないのだと言われている。 欧州中央銀行は欧州議会と欧州連合理事会に対して説明責任を負っている。欧州連合理事会は欧州中央銀行総裁、副総裁およびほかの役員会の役員を指名する権限を持っている。指名された候補者はまず欧州議会の承認を受けなければならず、続いて欧州連合理事会の承認を経て、各役員の担当分野を決定する。欧州中央銀行総裁は法の定めにより、欧州議会総会において年間報告書を提出することとされている。さらに総裁および役員会の代表は年4回、欧州議会経済通貨委員会において報告することとされている。このような報告は欧州議会または欧州中央銀行の求めに応じ定例外に行うことができる。 欧州連合の市民は国政選挙を通じて欧州中央銀行の政策決定に影響力を持つ。だが経済の見通しの変動が民主的な手段によって示された場合、選ばれた政治家は直接その変動を欧州中央銀行に伝えられないという限界がある。
※この「独立性をめぐる議論」の解説は、「欧州中央銀行」の解説の一部です。
「独立性をめぐる議論」を含む「欧州中央銀行」の記事については、「欧州中央銀行」の概要を参照ください。
- 独立性をめぐる議論のページへのリンク