特撮映画界におけるぬいぐるみ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/21 01:24 UTC 版)
「ぬいぐるみ」の記事における「特撮映画界におけるぬいぐるみ」の解説
映画界においては、ぬいぐるみは日本・海外ともに戦前からSF・特撮題材の映画で使用される全身を覆う衣装小道具として見られているが、「怪獣」という題材での本格的なぬいぐるみ使用は、日本では東宝が1954年(昭和29年)に制作公開した『ゴジラ』が元祖とされている。 日本初の巨大怪獣を映像化するにあたり、円谷英二特撮監督は、撮影日数を考慮して、海外で主流であった人形アニメの手法をあきらめ、人間が中に入って演技を行う「縫いぐるみ」の手法を選んだ。ぬいぐるみを被って演技する役者は「ぬいぐるみ役者」と呼ばれる。 記念すべき初の「縫いぐるみ怪獣役者」は中島春雄と手塚勝巳の両人である。内部演技者の視界は極端に制限され、火薬などを使う現場では危険も多く、また殺陣の心得も要求される特殊なものであり、高度な演技力が要求される。中島春雄は「怪獣演技者」として「ミスター・ゴジラ」と呼ばれるほど海外でもその名が知られている。 こういった異生物の造形素材は様々な手法で作られるが、『ゴジラ』などの怪獣の場合、特殊ゴムであるラテックスで表皮を作り、番線の鉄骨で補強し、内側にスポンジを張ったものが多い。この怪獣のパーツは制作進行に合わせて「縫い合わされ、成形されていく」ものであり、たいていの場合は背中にファスナーで開閉する出入り口が設けられている。 よく知られた日本の技術者としては、ゴジラ以前からの先駆者である大橋史典、一作目『ゴジラ』から連綿と東宝の怪獣を手掛けた利光貞三らの「特殊美術部」をはじめとして、高山良策や開米栄三(開米プロダクション)、エキスプロダクションなどが草分けとして知られている。 この映画の「ぬいぐるみ」は、現在においても映画やさまざまなメディアにおいての一表現手法として現役であり続けている。ハリウッドなどでは、一般に「スーツ」と呼ばれている。近年、日本ではこの縫いぐるみ役者を「スーツアクター」と呼ぶことが多い。 「ぬいぐるみ」の呼称は映画の現場用語であり、「スーツ」は演技者が使う用語である。近年、一般的な場では「着ぐるみ」と言い換えて呼称される場合が多いが、造形家である品田冬樹は、この怪獣の「ぬいぐるみ」の「着ぐるみ」呼称への言い換えについて「間違いであり、本来の映画現場用語としてはぬいぐるみが正しい」と述べている。
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