物理的物性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/12 19:20 UTC 版)
五フッ化リン分子は、中心リン原子と共有結合した、3つのフッ素の成す三角形(エクアトリアル位)を底面とし、同じくリン原子と結合した2つのフッ素を頂点(アキシアル位)とした三方両錐形分子構造を持つ。底面におけるF–P–F結合角は120° であり、2つのアキシアル位のフッ素原子は底面に対し垂直に結合する。リン原子とエクアトリアル位のフッ素原子との間の結合長はそれぞれ153 pmで、アキシアル位の原子との結合長は5 pm長く、158 pmである。 三方両錐形分子構造では二種類のフッ素原子が区別されるはずだが、フッ素19 NMR分光では、2997900000000000000♠−100 °C まで温度を下げてもアキシアル位のフッ素とエクアトリアル位のフッ素とを区別することはできない。これは、フッ素原子の分子内における位置交換を起こすベリー擬回転に起因する。この位置交換はNMR測定による検出が不可なほど速く、応答が時間平均されてしまう結果として、みかけ上5つの等価なフッ素原子に対応するスペクトルが得られる。 PF5のF中心のみかけの等価性は Gutowsky により初めて言及された。その説明はR・スティーブン・ベリー(英語版)により初めて与えられ、ベリー機構と名付けられた。NMRはミリ秒単位の時間スケールで動作するため、ベリー擬回転は、五フッ化リンに対する19F NMRスペクトルに影響を与える。固体の場合は、溶液中に比べて分子が静的であり、原子位置が変化できないために、電子線回折およびX線結晶構造解析で観測してもこの効果は見られない。 標準状態では五フッ化リンは無色気体で、空気の4-5倍重い。 融点 2998062000000000000♠−93.8 °C よりも下では五フッ化リンは空間群 P63/mmc(194番)で格子定数 a = 556 pm, c = 618 pm (c/a = 1.11) の既約単位格子あたり2式量を含む六方晶系に結晶化する。
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