物理モデル音源とは? わかりやすく解説

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物理モデル音源

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/02/20 09:13 UTC 版)

物理モデル音源(ぶつりモデルおんげん)は、デジタル信号処理 (DSP) を利用して、アコースティック楽器の発音構造や共鳴構造を計算モデルとしてコンピュータ上でいかに振動・共振するかをリアルタイムに演算し、音色を仮想的に合成(シミュレート)してを出す方式。実在するアコースティック楽器だけでなく、実在しない楽器を作成することも可能である。この物理モデル音源は物理音源やDSP音源とも呼ばれる。主としてはアコースティック楽器シミュレーションを行う音源であるが、特殊事例として、アナログシンセサイザーアナログ回路を計算モデルとするバーチャルアナログ音源も存在する[1]

特徴

物理モデル音源では、ヴァイオリンなどの擦弦楽器管楽器など「音が持続させている間、演奏者が音色を調節することができる楽器」を忠実に再現することができる。しかし、生楽器の忠実な再現のためには複雑な物理モデルが必要になり、制御するべきパラメータの個数も多い。従って、パラメータと音色の関係性が掴み辛く、音色の作成、およびリアルな再現をさせるのが極めて難しいと言われている。

一方で、音が減衰するだけのピアノドラムの音は、上記の楽器に比べて利点は少なくなるが、その分扱いやすくもなる。

PCM音源の音色増加によって制作負荷が少ないプリセット選択のみの方法で音楽制作が行われる事が多くなったことや、PCM音源と比べ演算負荷が高くなり、同時発音数がとても少ないため、音楽制作の現場において主流の製品が物理モデル音源へ移行することは無かった。現実世界に存在しない楽器のモデルを作り、音色を出すことも可能である。また、リアルタイムに楽器の材質を変化させることも可能である。これはPCM音源にはない特徴である。しかし、生楽器の構造を大きく変えてしまうような音色変化は極めて特殊効果的であり、ピアノの音色やアナログシンセの音色などのストレートな音色と比較すると使い所が非常に限られる。

管楽器を鍵盤のついたシンセサイザーで、リアルさを追求しつつ演奏する場合は、コントロールする項目が多くなる。管楽器のように息でリードを振動させて音を出すような楽器では、鍵盤を押すだけではリアルな音が出せず、ブレス・コントローラなどを利用して初めてリアルな音が出せる。そのため、PCM音源のような手軽さはなく弾きこなすには慣れが必要だが、ブレスコントローラや、ウインドシンセサイザーの様な機器を使用することにより、鳴り始めから鳴り終わるまでの擦れるような細かな息遣いまで再現が出来るのは物理モデルの最大の特徴であり利点である。プロ仕様のシンセサイザーや、エレクトーンに搭載されることが多く、1台で和音を演奏するような場合は安価に入手できない。過去にはYAMAHAのVP1という、完全受注生産で270万円もするシンセサイザーも存在した。生楽器の再現を目的とした物理モデル音源は利用者から見た場合に簡便性を欠き、音色の数も少なく、メインで使用することも難しいため、中途半端な立ち位置になってしまっている。

バーチャルアナログ音源アナログシンセサイザーの再現を目的としているが、出音を忠実に再現するためにアナログ回路シミュレーションする計算モデルを使用していることから、物理モデル音源の特殊事例となる。この試みは大きく成功しており、デジタルの利便性を最大限に活かしながら、アナログ的な音色を表現できるため、不安定で入念なメンテナンスが必要なアナログシンセサイザーの代替としてキーボーディストの演奏機材に組み込まれている。アコースティック楽器PCM音源が物理モデル音源に代替されることは無かったが、アナログシンセサイザーは大部分がバーチャルアナログ音源に代替されている。

歴史

世界で初めて1993年ヤマハシンセサイザーVL1に搭載された。ヤマハはVL1に採用したこの音源方式をVirtual Acoustic音源の略としてVA音源と名付けた。その後、1994年にポリフォニック版で撥弦楽器のシミュレートに特化したVP1、そしてVL1の廉価版VL7、モジュール版VL1-mなどを発表した。

その後もいくつかの機種がリリースされているものの、いずれも上記の理由であまり普及せず、波形の大容量化による音質の向上や音色のバリエーションの増加もあってPCM音源が主流のままである。

現在までに搭載された製品

ヤマハではヤマハ・VL/VPシリーズヤマハ・EXシリーズのEX5・EX5Rシンセサイザーに搭載。また、シンセサイザーと、モジュール音源向けに発売された拡張ボードPLG150-VL・PLG100-VLがある。近年では、1998年以降発売されたエレクトーンの上位機種や、現行機のSTAGEAの上位機種に搭載されている。

ヤマハ以外の製品では、コルグ社のZ1やProphecyがMOSS音源という名称の物理モデル音源を搭載している。Prophecyを除きその他のMOSS音源は、米国スタンフォード大学とヤマハが所有する電子楽器の特許技術のSONDIUS-XGを応用し融合させたものを搭載している。OASYSやその後継機種であるKRONOSの内蔵音源の一つとしてごく一部のエンジンが搭載されている。

フランスのIRCAMでは物理モデル音源ソフトウェアModalysが開発されており、Max/MSPOpenMusicと組み合わせて使用できる。この技術を応用して管楽器の音色を物理モデルで再現したBRASSというソフトウェア音源も発売されている。

VSTiにおいても主流ではないが、Audio ModelingのSWAMシリーズ、IK MultimediaのMODO BASS、WALLANDERのWIVIシリーズなどが存在する。

アナログシンセサイザーをデジタルで再現したNord Leadや、ローランドのJP-8000などのバーチャルアナログ音源は、アコースティック楽器ではなくアナログ回路を計算モデルとしたものであり、物理モデル音源の特殊事例である[2]

ソフトウェア音源

  • IK Multimedia
    • MODO DRUM
    • MODO BASS - エレクトリックベース
  • Applied Acoustics Systems (A|A|S)
    • Strum GS - ギター
    • String Studio VS
    • Chromaphone - 弦、プレート、木琴、ドラム、チューブラーベル等を組み合わせて音色を設計
  • Modartt
    • Pianoteq - ピアノやエレピの他、チェンバロ、チェレスタ、木琴、鉄筋からハープやクラシックギターなど多様な楽器を再現
    • Organteq - パイプオルガン
  • Arturia
    • Piano V
  • Audio Modeling
    • SWAM Solo Strings
    • SWAM String Sections
    • SWAM Solo Woodwinds
    • SWAM Solo Brass

脚注


物理モデル音源

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/14 14:54 UTC 版)

日本の発明・発見の一覧」の記事における「物理モデル音源」の解説

最初に市販された物理モデル音源シンセサイザーは、1994年ヤマハのVL-1であった

※この「物理モデル音源」の解説は、「日本の発明・発見の一覧」の解説の一部です。
「物理モデル音源」を含む「日本の発明・発見の一覧」の記事については、「日本の発明・発見の一覧」の概要を参照ください。

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