潜在的な腐生植物(部分的菌従属栄養植物)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/26 14:37 UTC 版)
「腐生植物」の記事における「潜在的な腐生植物(部分的菌従属栄養植物)」の解説
植物の中には、緑葉によって十分な光合成が可能に見えるにもかかわらず、菌根からの有機物供給に深く依存しているもの、また生活史の一時期に限って腐生植物としての生活を送るものが知られている。 ラン科の植物は、野生条件下では種子の発芽に特定の系統群の担子菌、あるいは担子菌由来の不完全菌からの栄養素の供給が不可欠であり、菌類に依存したこのような発芽様式を菌発芽と呼ぶ。また、ある程度の大きさに実生が成長するまでは菌類に依存することが知られている。この段階は着生生活をするランでは短いが、地生のランの中にはしばしばこの状態で非常に長い期間地下生活を送り、かなりの大きさになってから初めて葉を伸ばして光合成を行うようになるものが知られている。例えばシュンラン属の地生ランの実生はショウガの根茎状の姿で長期間地下生活を送る。この段階は正に腐生植物としての生活を送っているとみなすことができる。 ラン科植物には、緑葉が発達しているにもかかわらず鉢植え栽培が著しく困難な種が数多く知られている。例えば都市公園の芝生にもよく自生しているネジバナも、他の植物と共に植木鉢に植えておくとよく成長するのに、単独で鉢植えにすると短期間で弱ってしまい、意外に栽培が難しいことが知られている。 イチヤクソウ科(現在のAPG分類体系ではツツジ科の1系統としている)の植物は、日当たりのよい環境に葉を展開して光合成で生活しているように見えても、単独で植木鉢に植えて育てると通常うまく育たずに枯死してしまう。2000年代になって日本産のベニバナイチヤクソウの根には、イボタケ科などの周囲の樹木との間に外菌根を作って共生している複数の種の菌根菌の菌糸が一株の根に同時に入り込んでアルブトイド菌根を形成し、樹木が光合成によって同化した有機物が菌根菌を介してベニバナイチヤクソウに供給されていることが、共生菌の遺伝子解析と、ラジオアイソトープをトレーサとして用いた研究によって証明された。さらに種子発芽の段階ではロウタケ属菌による菌発芽を行っていることが報告された。また、ベニバナイチヤクソウはカラマツなどと一緒に鉢に植えると、外菌根菌と三者共生を成立させて長期間生存可能であることも知られている。 種子植物以外にも、胞子で繁殖するためにシダ植物としてまとめられている維管束植物の中に、生活史の一時期を腐生植物として送るものが知られている。例えば、マツバラン類、ハナワラビ類、ハナヤスリ類、ヒカゲノカズラ類などの配偶体は真正シダ類の配偶体のような前葉体ではなく、地中に埋もれて葉緑素を持たない芋状の形であることが多い。この内部には外部からアーバスキュラー菌根菌の菌糸が入り込んで有機物を供給しており、一種の腐生植物として生活を送っている。
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