漢字からカナへ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/04 16:11 UTC 版)
「外国地名および国名の漢字表記一覧」の記事における「漢字からカナへ」の解説
外国地名の漢訳表記を中国語から借用したり、中国語になければ独自に漢字表記を創作したりする慣習は、江戸時代から明治まで続いた。特に、幕末・明治初期には、西洋諸国との人の往来が頻繁になるとともに、外国地名を読み書きする機会も増加し、当時の知識人たちの間で漢語的表現が流行したことも相まって、多様な外国地名の漢字表記が編み出された。混在した漢字表記の規範を示そうと、明治初期に「原典表記」とするべき中国語の漢訳表記を多く紹介した地名人名の漢訳字典が出版されたが、明治後期から大正期にかけてカナ表記も徐々に普及し、外国地名を漢字で書き表す習慣は次第に衰退していった。外国地名表記の漢字からカナへの転換は、大正、昭和と段階的に進められた、国の漢字制限政策の推進とほぼ軌を一にしている。大正期の常用漢字表発表(1923年)の頃には、漢字表記に代わってカナ表記が優勢になり、昭和期の当用漢字表の告示(1946年)以後は、「欧州」「英国」「豪州」「真珠湾」「米国」など、一部の慣用表記を残して、漢字表記のほとんどは日本社会から姿を消した。現代日本語では、外国地名は多くの場合、現地読みを写し取って、表音文字のカタカナで表記される一方、漢字表記に関しては、「欧」「英」「米」のような音訳地名の略称と、「太平洋」「真珠湾」「金門海峡」「喜望峰」のような意訳地名が、いずれも漢字音で読まれる点を共通項として生き延びているのみである。 そのような漢字表記の廃れた現下の言語環境を反映してか、日本漢字能力検定では当て字に関する問題の一部として、1級の試験問題で外国地名の漢字表記の読みを答えさせる問が出題される。
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