治療用タンパク質における重要性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/03 08:30 UTC 版)
「N-結合型グリコシル化」の記事における「治療用タンパク質における重要性」の解説
上市されている治療用タンパク質の多くは抗体であり、N-結合型糖タンパク質である。エタネルセプト、インフリキシマブ、リツキシマブはこうしたN-結合型グリコシル化がなされた治療用タンパク質の例である。 製薬分野におけるN-結合型グリコシル化の重要性は明らかに高まっている。細菌や酵母のタンパク質生産系は高収率で低コストという大きな利点が存在するが、対象のタンパク質が糖タンパク質である場合には問題が生じる。大腸菌などの大部分の原核生物発現系は翻訳後修飾を行うことができない。一方、酵母や動物細胞などの真核生物の発現宿主はヒトとは異なるグリコシル化パターンを持つ。こうした発現宿主で生産されたタンパク質は多くの場合ヒトタンパク質と同一ではなく、そのため患者で免疫反応を引き起こす。例えば、出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeは多くの場合高マンノース型糖鎖を産生し、これらは免疫原性を有する。 CHO細胞やNS0細胞(英語版)などの非ヒト哺乳類発現系は複雑なヒト型糖鎖を付加する装置を備えている。しかしながら、こうした系で産生される糖鎖はヒトで産生される糖鎖とは異なる場合があり、例えば、ヒト細胞はN-アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)を含む糖鎖のみを産生するのに対し、こうした細胞はNeu5AcとN-グリコリルノイラミン酸(英語版)(Neu5Gc)の双方でキャップされている場合がある。さらに、動物細胞はガラクトース-α-1,3-ガラクトースエピトープを含む糖タンパク質を産生する場合があるが、これはα-galアレルギーを持つヒトにアナフィラキシーショックを含む重篤なアレルギー反応を引き起こす可能性がある。 遺伝子ノックアウトによってこうした糖鎖構造を産生する経路を消失させるなど、いくつかのアプローチによってこうした欠点は対処されている。さらに、ヒト様のN-結合型糖鎖を持つ治療用糖タンパク質を産生するよう、発現系の遺伝的改変も行われている。こうした発現系には、ピキア酵母Pichia pastoris、昆虫細胞株、植物、細菌のものも存在する。
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