沈み込み角と地震カップリング
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/04 06:06 UTC 版)
「沈み込み帯」の記事における「沈み込み角と地震カップリング」の解説
T. Lay および金森博雄はプレート境界の沈み込み帯を、断層面のアスペリティが占める割合に基づいて以下の4種に分類した。 カテゴリー1 - 全長500km以上のほぼ同じラプチャーゾーン(断層破壊域)をもつ巨大地震が規則正しい時間間隔で発生する傾向がある。アスペリティはプレート境界ほぼ全域に分布する。例 : 南チリ沈み込み帯。 カテゴリー2 - ラプチャーゾーンがカテゴリー1よりやや小さく、あるときはセグメントが個別に断層破壊し、あるときには全長500km程度の海溝全体が断層破壊して巨大地震を引起す。例 : アリューシャン沈み込み帯。 カテゴリー3 - いつも同じ部分が断層破壊して大地震を発生させるが、同時に複数のセグメントが断層破壊して巨大地震を発生することは稀である。例 : 千島列島沈み込み帯。 カテゴリー4 - 非地震性のすべりの割合が大きく、巨大地震は発生しないとされる。例 : マリアナ沈み込み帯。 M9クラスの超巨大地震はカテゴリー1の沈み込み帯において発生するとされ、南チリでは1960年にチリ地震が発生し、日本においては従来、南海トラフはカテゴリー2、日本海溝はカテゴリー3に属するとされてきたが、その日本海溝では2011年にM9.0の東北地方太平洋沖地震が発生した。 これらの分類はプレートの沈み込み角度が関連し、若く、薄く弾力性があるプレートは低角で沈み込み、プレート間に高圧がかかり摩擦が高く固着が強くなる。一方で古く、厚く脆いプレートは高角で沈み込み固着が弱いとされる。固着の強い沈み込み帯はプレート移動のエネルギーの多くが巨大地震によりプレート間に歪が放出され地震カップリング率が高く、固着の弱い沈み込み帯は非地震性のすべりが多く、地震による歪の開放の割合が小さく地震カップリング率が低い。 電子基準点やGPSの解析により日本付近のプレート境界におけるプレート間の固着による滑り遅れ速度が推定されており、歪の蓄積の度合いや地震カップリング率が見積もられている。 日本付近で最も低角で沈み込むのは南海トラフで、高角で沈み込むのは伊豆・小笠原海溝であり、このことが日本周辺における地震の起こり方を支配している。南海トラフでは凡そ100 - 150年毎に連動型巨大地震を発生し、時には1707年の宝永地震のような南海トラフ全般に断層破壊が及んでいるが、伊豆・小笠原海溝では小さな地震は頻発しているものの巨大地震が確認されていない。 1700年にカスケード地震を引起したカスケード沈み込み帯は、普段は地震の回数が少なく歴史記録上は静穏を保っているが、若いファンデフカプレートが低角で沈み込み固着が強く、地質調査から巨大地震が数百年毎に発生していると推定され、将来M9クラスの地震の発生が予測される。
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