汚染の言説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/26 03:29 UTC 版)
有毒物質や環境汚染に対する不安や恐れを表現した言葉や、そのプロセスについての分析を「汚染の言説」とも呼ぶ。この用語はローレンス・ビュエル(英語版)の論文「Toxic Discourse」(1998年)に由来する。 産業による環境破壊を問題提起した初期の作品として、ヘンリック・イプセンの戯曲『民衆の敵』(1882年)がある。ジャーナリズムによる扇動、経済開発に反対する少数派への攻撃なども描かれている。20世紀に入ると、化学薬品の危険性を訴えたレイチェル・カーソンの『沈黙の春』(1962年)や、公害病である水俣病の患者とその家族を描いた石牟礼道子の『苦海浄土』(1969年)が書かれた。 放射能汚染については、日本への原子爆弾投下にもとづいた作品が林京子など日本の作家によって多数書かれており、原爆文学とも呼ばれている。チェルノブイリ原子力発電所事故については、クリスタ・ヴォルフの小説『チェルノブイリ原発事故』(1987年)や、スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチのノンフィクション『チェルノブイリの祈り』(1997年)がある。 アメリカでは、ニューメキシコ州の核実験を描いたルドルフォ・アナーヤ(英語版)の『ウルティマ、ぼくに大地の教えを(英語版)』(1972年)、ネヴァダ州の核実験を問題視したテリー・テンペスト・ウィリアムス(英語版)の『鳥と砂漠と湖と』(1991年)などがある。カナダの先住民ディネの系譜にあたる作家マリー・クレメンツ(英語版)は、戯曲『燃えゆく世界の未来図』(2003年)でグローバルな被爆問題をテーマとした。ディネの土地で採掘されたウラニウムが広島や長崎の原子爆弾に使われたという史実にもとづき、マジック・リアリズムの手法で描いている。東京電力による福島第一原子力発電所事故(2011年)ののちには、川上弘美が放射能汚染の観点から自作を書き直した『神様 2011』なども発表されている。
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