水面の生態
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/17 06:42 UTC 版)
ここでは、水面を主とする環境における生態について概説する。 水面を生活の場とする生物をニューストンという。これには、アメンボのように水面の上に乗るもの、ウキクサのように水面に接して存在するもの、アサガオガイ(英語版)のように水面に裏側から接するものなどがある。アサガオガイは空気の袋を作り、これにぶら下がって水面に生息する。クラゲの一種であるカツオノエボシやギンカクラゲは気体の入った大きな浮き袋を持ち、水面を生活の場とする。 アメンボ程度以下の動物の場合、水面を漂うことはさほど困難ではない。普通のアメンボには、長い足など水面に浮かぶための適応が見られるが、小型のアメンボ類であるカタビロアメンボ類(英語版)などは特に水上生活に適応したととれる部分が少ない。トビムシ類も水面に出てくるものが多くある。逆にこのような小型動物では水面を突っ切るのが困難である。トンボのうち、水中に産卵するものは、水草の茎にすがりついて水中に進入する。クモ類(蛛網類)では、ハシリグモ類に水上生活に適応している種類が多い。 また、水面は空中と水中の間の障壁としても機能する。例えば、水面上から水中の獲物を狙うためには、水面の光の反射はきわめて邪魔である。また、水面での光の屈折は、獲物の位置の特定を難しくする。斜め方向から水中の獲物を狙うサギのような鳥は、この見える位置と狙うべき位置を補正しなければならない。カワセミなどは水面の真上から垂直に飛び込んで獲物を狙うため、補正は少なくて済むが、これも常というわけではない。また、トビウオやトビイカ (Sthenoteuthis oualaniensis) の滑空は水中の捕食者(主に高速で追ってくる肉食魚)から逃れるための生態である。視界が遮られる水面より上に飛び出して捕食者の眼からいったん逃れ、その後、着水地点を予想されることのないよう直進を避け、トビウオは鰭をトビイカはエンペラと腕を使って滑空コースを変えることで初めて捕食を免れ得る。音波に関してはさらに遮断が厳しい。ウオクイコウモリ(英語版)は反響定位によって獲物を狙うとされるから、おそらくは魚が水面から体の一部を出した瞬間を狙うものと考えられる。
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