水溶液中の酸強度との関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2014/12/12 03:44 UTC 版)
「プロトン親和力」の記事における「水溶液中の酸強度との関係」の解説
気相中におけるプロトン解離平衡と、イオンおよび分子の水和エネルギーから、水溶液中におけるプロトン解離平衡における酸解離定数を見積もることができる。まず共役塩基のプロトン付加反応は酸解離の逆反応であり、気相中の共役塩基のプロトン親和力は、気相中の酸解離を示す指標でもある。次に気相中の酸、プロトンおよび共役塩基それぞれの水和エネルギーを見積もることにより、水溶液中の酸解離定数の概数を見積もることが可能となる。プロトン化ヘリウム、フッ化水素および水素の酸解離についての推定結果をまとめると以下のようになる。 Proton affinity HHe+(g) → H+(g) + He(g) +178 kJ mol−1 HF(g) → H+(g) + F−(g) +1554 kJ mol−1 H2(g) → H+(g) + H−(g) +1675 kJ mol−1 Hydration of acid HHe+(aq) → HHe+(g) +973 kJ mol−1 HF(aq) → HF(g) +23 kJ mol−1 H2(aq) → H2(g) −18 kJ mol−1 Hydration of proton H+(g) → H+(aq) −1530 kJ mol−1 H+(g) → H+(aq) −1530 kJ mol−1 H+(g) → H+(aq) −1530 kJ mol−1 Hydration of base He(g) → He(aq) +19 kJ mol−1 F−(g) → F−(aq) −13 kJ mol−1 H−(g) → H−(aq) +79 kJ mol−1 Dissociation equilibrium HHe+(aq) → H+(aq) + He(aq) −360 kJ mol−1 HF(aq) → H+(aq) + F−(aq) +34 kJ mol−1 H2(aq) → H+(aq) + H−(aq) +206 kJ mol−1 Estimated pKa −63 +6 +36 水素分子は著しい弱酸と推定され、その共役塩基を含む水素化ナトリウムなどは有機合成において強塩基として用いられる。 フッ化水素の実測値 pKa = 3.17 と多少のずれがあるが、これは水和熱などの大きな値を使用したためによる誤差である。水溶液中においてフッ化水素はシランよりもはるかに強い酸であるが、気相中における F− と SiH3− のプロトン親和力はほぼ等しい。これは水溶液中において、フッ化物イオンの方がより強く水和し安定化されるためである。 水酸化物イオンも気相中においては著しい強塩基であるが、水溶液中では水和により塩基性は減少する。例えば溶媒和の影響が水溶液中よりも少ないジメチルスルホキシド中に懸濁させた水酸化カリウムは、水溶液中よりも強い塩基として作用しトリフェニルメタン pKa = 30(計算値)からもプロトンを引き抜くことが可能である。
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