氏の法的性格
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既述のように1898年(明治31年)に公布された民法では「戸主及ヒ家族ハ其家ノ氏ヲ称ス」と規定されていた(明治民法746条)。しかし、第二次世界大戦後における家族法の大改正の際、旧来の家制度は日本国憲法の理念と相容れなかったことから廃止された。氏の制度については存続したが、社会習俗上はともかく、法制度上は家という拠所を失ったため、その法的性格をどのように考えるかが問題となった。現行法上の氏の法的性格については、 個人呼称説(氏は純粋に各人の同一性を識別するための個人の呼称であるとする説) 血縁団体名称説(血統名説とも。氏は各人の属する血縁団体(血縁)の名称であるとする説) 家族共同体名称説(家族共同態名説とも。氏は各人の属する家族(家族共同体・家族共同態)の名称であるとする説) 同籍者集団名称説(同籍者名説とも。氏は戸籍編製の基準となる同籍者集団の名称であるとする説) 多元的性格説(氏の法的性格について多元的に理解すべきとする説) など見解は多岐に分かれている。このうち個人呼称説が現在の民法学上の通説であるとされるが、近時、氏には人の同一性を明らかにするとともに、現実の家族共同生活をする個人に共通する呼称としての性格を併せもっているとの見解が有力になっている。 現行法上、氏の異同は原則として実体的権利関係を伴わないものとされる(復氏と姻族関係には互いにつながりはないこと、父の認知が直ちに子の氏に影響を与えることはないこと、氏の異同は扶養義務や相続権に影響しないことなど)。ただし、例外的に祭祀財産の承継と戸籍の編製については氏を基準としている。
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氏の法的性格
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古来より、個人がいずれの血族集団または家族集団に属する者かを示すために姓あるいは氏の制度が認められた。儒教思想の下での同姓不娶・異姓不養の原則でいう姓が血族集団を示すものであるのに対して、明治民法下での氏は家族集団である「家」の名称を示すものとされ、そこでは「戸主及ヒ家族ハ其家ノ氏ヲ称ス」と規定されていた(明治民法第746条)。 戦後の親族法改正時においても、氏については日本における習俗と国民感情を考慮して存続されることとなった。しかし、旧来の家制度については廃止され、現行法の下での氏の法的性格について以下のような見解に分かれている。 個人呼称説 氏を純粋に各人の同一性を識別するための個人の呼称とみる説。現在の民法学上の通説であるとされる。 血縁団体名称説(血統名説) 氏を各人の属する血縁団体(血縁)の名称とみる説。ただ、本来、中国の姓のように氏姓が血統を表している場合には、姓は出生によって定まるもので婚姻によっても変更されない。したがって、この説では現行の日本法における夫婦同氏の原則を説明するのに難があるとの批判がある。 家族共同体名称説(家族共同態名説) 氏を各人の属する家族(家族共同体)の名称とみる説。 同籍者集団名称説(同籍者名説) 氏を戸籍編製の基準となる同籍者集団の名称とみる説。この説に対しては氏の取得・変更は民法で定め戸籍法において反映されるべきもので本末転倒すべきでないとの批判がある。 多元的性格説 氏の法的性格について多元的に理解すべきとみる説。近時、氏には人の同一性を明らかにするとともに、現実の家族共同生活をする個人に共通する呼称としての性格を併せもっているとの見解が有力になっている。
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