正味の燃料エネルギー収支
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/17 05:27 UTC 版)
「アルコール燃料」の記事における「正味の燃料エネルギー収支」の解説
存続し続けるには、アルコール・ベースの燃料経済は燃料エネルギー収支の正味が黒字になっているべきである。すなわち、アルコールを生産するのに費やした全ての燃料エネルギー、これには原料植物を耕作、収穫、輸送、発酵、蒸留、配送に費やされた燃料はもちろん、同様に農場を建設したり農業機具を製作するのに費やした燃料が含まれるのだが、その総計に対しては生産された燃料が内蔵しているエネルギー量を超えるべきではない。たとえば、「1ガロンの燃料を作り利用するまでに、2ガロンの燃料を消費する」のでは意味が無いと言うことである。 燃料エネルギー収支を赤字の状態でシステムを切り替えることは、単に非アルコール燃料の消費を増やすだけに終わるであろう。そのようなシステムは、石炭、天然ガスあるいは作物残渣由来のバイオ燃料のような輸送に適していない非アルコール燃料を利用する為の迂回路以上の価値を持たないであろう(実際、多くの合衆国の提案は蒸留のために天然ガスの使用を想定している)。そして、アルコール燃料の環境貢献度や持続性の優位性はシステムの燃料収支が赤字であれば実現することができないであろう。 エネルギー収支の黒字幅がわずかならばやはり問題は発生する。もし正味の燃料エネルギー収支が50%ならば非アルコール燃料の使用をやめる為に、1ガロンのアルコールを消費者に届けるために、2ガロンのアルコール製造が必要となる。 この問題は、地政学が決定的な要因となる。ブラジルといった、豊富な水と土地資源をもつ熱帯地方で、サトウキビから生成したエタノールの永続性は疑問の余地もない。実際、サトウキビ残留物(バガス)を燃やすことでエタノールプラントを操業する以上のエネルギーを生み出し、プラントの多くは、今や公衆に余剰電力を販売している。豊富な水力発電所をもつ国なので電力の使用を生産に振り向けると、たとえば粉挽きや蒸留の改善を通じてエネルギー収支の循環が好転する余地がある。 熱帯以外の地域においては全くちがった構図になる。そこの気候はサトウキビにとって寒冷すぎる。アメリカ合衆国において、農業アルコールは一般に穀物、主としてトウモロコシから得られる。そして正味の燃料収支は道はいまだに険しいといった状態である。
※この「正味の燃料エネルギー収支」の解説は、「アルコール燃料」の解説の一部です。
「正味の燃料エネルギー収支」を含む「アルコール燃料」の記事については、「アルコール燃料」の概要を参照ください。
- 正味の燃料エネルギー収支のページへのリンク