樹液の採取
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 09:07 UTC 版)
日本では漆掻き職人が対象とする樹の幹の表面に地面に対し切り込みを入れ、染み出す樹液を一滴づつ切れ込みをなぞってすくい取り、タカッポと呼ばれる木製の容器に集める。他の地域ではⅤ字に切れ込みをいれ、貝殻、缶、プラスチック板などを打ち込み自然に垂れてきた樹液を受け皿に溜める。 うるし掻きの方法は、一年で樹幹の全体に傷を付け、うるし液を採り切り、その後萌芽更新のため木を切り倒してしまう「殺掻き(ころしがき)法」が現在日本では主流である。植付後4-5年ないし6-7年の樹周が20cm内外になる頃、また、樹齢の大きいものでは樹液が盛んに流動する5-6月頃から11月中旬に採液を行う。他には、数年に渡って採り続ける「養生掻き法」がある。 以下、殺掻きの採取法について記す。まず外皮を削り取り、樹幹の地上25cmの箇所から梢方に35cmほどの間隔で樹幹の一側面に長さ2cm余の横溝をつけ(これを検付という)、次に反対面にもまた表面検付間のほぼ中央から検付を施し、梢方に向かって表面と同様に行ない、螺旋状に傷を付ける(幹囲22-25cmの樹では樹の一方の側面からのみ採液し、これを「一腹掻」といい、幹囲27-45cmくらいのものは両面より採液し、これを「二腹掻」といい、幹囲のさらに大きいものは三腹掻を行なう)。 傷の長さは2-3cm、深さは6mm、検付の数は、周囲22-25cmくらいのものでは9-11箇所、検付が終れば溝の上部6-9mmばかりの箇所にさらに横溝を付け、次に材部にまで達する傷を与え、流出する灰白色の乳状の液を漆壺内に採集する。掻工は、一日に全担当樹の4分の1を採液し、全樹の採液が終わったら元の樹に返り、旧検付の上方6-9mmばかりの箇所に横溝を施して採液し、以上の作業を幾回も繰り返す。 溝の長さは回ごとに長くし、秋の彼岸までに十数回から二十数回の横溝を画して採液する(これを辺掻または本掻という)。 最下部は、表裏両面ともに検付の上下に横溝を施し、すると傷の配列は中央のくびれた鼓状をなすので、鼓掻といい、辺掻と区別される。 辺掻で得た液は初漆(6月中旬から7月中旬までに採集したもの)、盛漆(7月中旬から9月中旬までに採集したもの)、末漆(9月初旬から秋彼岸までに採集したもの)に区別される。 辺付が終わったら、検付の下部および幹の細い部分から採液し(この液は裏あるいは裏漆という)、さらに幹面不傷の部を選んで採液し(この液を止あるいは留漆という)、また枝を伐採し小刀で傷を付け採液する。 採液がことごとく終了したら、樹幹を伐採し根株から発芽させ新林に備えることとする。 採液の収量は、樹幹18cmのもの110g内外、樹幹21cmのもの125g内外、樹幹24cmのもの140g内外、樹幹27cmのもの190g内外、樹幹30cmのもの245g内外、樹幹36cmのもの375g内外、樹幹42cmのもの490g内外、樹幹51cmのもの750g内外、樹幹66cmのもの1,540g内外である。ただし、樹齢、土質、気候、掻方などにより多少異なる。
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