様式と文脈
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/26 20:26 UTC 版)
「聖ゼノビウスの生涯の場面」の記事における「様式と文脈」の解説
苦悩で歪められた人物と建築の背景への関心を備えた、いくぶん劇的な様式の作品は、ボッティチェッリの晩年に典型なものである。工房の助手たちの関与について、さまざまな度合いが想定されている。洗礼を受けているゼノビウスの、大部分裸体の描写は貧弱で、腕は胴体には小さすぎ、足は奇妙である。 この連作は、同時期に制作されたいまひとつの連作とよい比較対象である。すなわち、ベルガモのアカデミア・カッラーラにある『ウェルギニアの物語』(86 x 165cm)、そして、ボストンのイザベラ・スチュワート・ガードナー美術館にある『ルクレティアの物語』(84 x 177cm)である。これらの作品は聖ゼノビウスの連作より少し大きいサイズで、描写は人物、衣装、建築ともより精巧である。 建築は同時代のフィレンツェの様式を示しており、360〜415年ごろの都市を描くのに適切というわけではない。豪奢な建物にグロテスク装飾を用いていることは注目に値する。ボッティチェッリはローマの建築様式を非常に効果的に把握していたため、ローマを訪れたのではないかと考えらている。ネロの黄金宮殿は、1480年ごろ、おそらく1500年の聖年のために発掘され、再発見されていた。聖ゼノビウスの青年期を描いているロンドンの板絵では、右側の豪奢な建物は、初期のフィレンツェ大聖堂 (洗礼式の場面)と旧サン・ピエトロ大聖堂 (教皇による聖別の場面) の両方を表している。 聖職者は基本的に同時代の聖職者の服を着ているが、信徒のほとんどは「象徴的」衣装、すなわち、ルネサンス時代に古代のものと考えられていた衣服を身に着けている。例外は、ポーター、少年、使用人が身に着けている短い上着を含む当時の服装である。当時の男性の衣装の要素、特に上流階級の人物の「対照的な折り返し、またはターバンの形をした王冠が付いた、金の刺繡のある尖った帽子」は、1500年にはどちらかといえば時代遅れとなっていた。
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