構造の柔軟性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/02 00:52 UTC 版)
タンパク質設計では、タンパク質のターゲット構造(または複数の構造)がわかっている。しかし、合理的タンパク質設計アプローチでは、その構造に合わせて設計できる配列の数を増やし、配列が別の構造に折りたたまれる可能性を最小限に抑えるために、ターゲット構造がある程度の柔軟性を持つようモデル化する必要がある。たとえば、タンパク質再設計において、密に詰まったコア内にある1つの小さなアミノ酸(アラニンなど)を再設計する場合、周囲の側鎖が再パッキングを許さなければ、合理的設計手法によってターゲット構造に折りたたまれると予測される変異体は非常に少ない。 このように、設計プロセスの重要なパラメータは、側鎖と主鎖の両方にどれだけの柔軟性を持たせるかということである。最も単純なモデルでは、タンパク質の主鎖は剛体のまま保たれ、タンパク質の側鎖の一部が立体配座を変更できる。ただし、側鎖は、結合長、結合角、およびχ二面角に多くの自由度を持つことができる。この空間を単純化するために、タンパク質設計法では、結合長と結合角に理想的な値を想定する回転異性体ライブラリを使用し、χ二面角を回転異性体(rotamer、ロータマー)と呼ばれるいくつかの繁盛に観察される低エネルギー配座に限定する。 回転異性体ライブラリは、多くのタンパク質構造の分析に基づいて回転異性体を記述する。主鎖非依存の回転異性体ライブラリは、すべての回転異性体を記述する。一方、主鎖依存型回転異性体ライブラリでは、側鎖周辺のタンパク質主鎖の配置に応じて、回転異性体がどの程度出現する可能性があるかを記述する。回転異性体ライブラリで記述される回転異性体は、通常、空間上の領域である。ほとんどのタンパク質設計プログラムでは、1つの立体配座(例えば、空間内の回転異性体二面角の再頻値)または回転異性体によって記述される領域内の複数の点を使用する。対照的に、OSPREYタンパク質設計プログラムは、連続領域全体をモデル化する。 合理的タンパク質設計では、タンパク質の一般的な骨格を維持する必要があるが、骨格の柔軟性をある程度確保することで、タンパク質の一般的な折りたたみを維持しながらその構造に折りたたまれる配列の数を大幅に増やすことができる。タンパク質再設計においては、配列変異は骨格構造に小さな変化をもたらすことが多いため、骨格の柔軟性は特に重要である。さらに、主鎖の柔軟性は、結合予測や酵素設計など、タンパク質設計のより高度な応用に不可欠である。タンパク質設計の主鎖の柔軟性のモデルには、小さくて連続的な大域的主鎖の動き、ターゲットフォールドの周りの離散的な主鎖サンプル、バックラブ(backrub)の動き、およびタンパク質ループの柔軟性などがある。
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