構造と毒性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/21 08:57 UTC 版)
Aβは一般的に天然変性タンパク質であると考えられている。このことは、Aβが溶液中では特定の三次元フォールドを取るのではなく、一群の複数の構造からなることを意味している。そのため結晶化されず、Aβに関する構造情報はNMRと分子動力学計算に由来している。Aβの26アミノ酸ポリペプチド (Aβ10–35) のNMR由来の初期のモデルは、明らかな二次構造要素が存在しない崩壊したコイル構造を示している。しかし、より最近 (2012) のNMR構造 (Aβ1–40) は明確な二次構造と三次構造を有している。レプリカ交換法による分子動力学計算からは、Aβは実際に異なる複数の構造状態からなることが示唆されており、より近年の研究では、統計的な分析によって非常に多数の異なるコンフォメーションのクラスターが同定されている。NMRに基づくシミュレーションによると、Aβ1–40とAβ1–42も非常に異なるコンフォメーションを取るようであり、Aβ 1–42のC末端はAβ1–40よりも構造的である。 低温・低塩状態では、β構造を持たない五量体の円盤状のオリゴマーを単離することが可能である。対照的に、界面活性剤の存在下で調製された可溶性オリゴマーは、線維のものとは異なる、平行型と逆平行型が混合したβシート構造を相当量含むという特徴があるようである。計算機を用いた研究では、膜に埋め込まれたオリゴマーはβ-ターン-βモチーフ構造であることが示唆されている。 Aβが神経を損傷し細胞死を引き起こす方法として示唆されている機構には、自己凝集の過程における活性酸素種の産生も含まれている。In vitroでは、神経細胞膜でこれが起こると、脂質過酸化反応が引き起こされて4-ヒドロキシノネナール(英語版)と呼ばれる有毒なアルデヒドが産生され、イオン駆動性ATPアーゼ、グルコーストランスポーター、グルタミン酸トランスポーターの機能を損傷する。結果として、Aβは神経細胞膜の脱分極、カルシウムの過剰な流入、ミトコンドリアの損傷を促進する。Aβペプチドの凝集はin vitroで膜を破壊する。
※この「構造と毒性」の解説は、「アミロイドβ」の解説の一部です。
「構造と毒性」を含む「アミロイドβ」の記事については、「アミロイドβ」の概要を参照ください。
- 構造と毒性のページへのリンク