木材の杢目
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/06 00:40 UTC 版)
「ギブソン・レスポール」の記事における「木材の杢目」の解説
メイプル材にはフィギュア、もしくは杢(もく)と呼ばれる様々な美しい模様が発生しているものがある。そのような材を持つオリジナルモデルは現在では非常に高価に取引されている。しかし、発売当時は特に注目もされておらず、ギブソン社自体、売りにもしていなかった点が興味深い。これは、フリッチマッチの個体の片側の材のみに杢があるものが少なくないことでも裏付けられている(マッチングの要件として杢は対象外であったことになる)。杢の人気を決定づけたのは、生産打ち切り後10年以上経った70年代当時の洋楽雑誌において、まだ白黒が一般的であったミュージシャンのステージ写真に、半ば実物以上に強く写り込むことで広く認知されたためであり、その後、80年代には異常な人気を博すまでに至る。特にフレイムを始めとした特別な杢目を持った個体は、希少価値のある個体として高価なオリジナルモデルの中でも更に高値で取引されるようになり、現在国内で取引されるオリジナルのスタンダードの価格は2000万円を超えるまでになってしまった。オリジナルのレスポールに現れている杢としては、トラ目、もしくはフレイム(炎)、ピンストライプと呼ばれる縞模様系がほとんどであり、バーズアイやキルトと呼ばれるものはごく稀でしかない(これは、当時使用されていたハード・ロック・メイプル材の杢の傾向でもある)。 レスポール表面はバイオリン属のようなアーチドトップ形状に仕上げられているが、これはメイプル材を削り込んで成型されている。このため折角のブックマッチによる左右対称木目模様はボディセンター部を残して失われてしまう。対称模様の崩れを目立たなくするには柾目の材を選別使用すれば良いわけであるが、先に述べたような材料入手性の悪さからそのような贅沢は出来なかった。板目材のモデルではフリッチマッチとの判別が困難なほど左右の乱れが大きいものも珍しくない。もっとも、板目材も使用されていた別の理由として、マホガニーとのラミネート構造のおかげで板目材に起こりやすい反りの心配がなかったという点もある。 一方で杢の観点から見れば、柾目材の杢は比較的単純なピンストライプが多く、フレイムのような人気の高いものは板目と柾目の中間の板取をされた追柾目材であることがほとんどである。板目材では杢は現れないのが普通であるが、ごく稀に存在する板目の杢は非常に不規則かつ大胆であり、コレクターに珍重されている。また、バーズアイは板目にしか存在しない。このような杢の個体が存在することになったのも、メイプル材の「倹約励行」がもたらした偶然によるものである。現存するオリジナルレスポールにおけるメイプル材の柾目、追柾目、板目それぞれの存在割合は、一本の丸太を端からスライスして板取していったときに出来る割合とほぼ等しいと言われている。 ちなみに現在では、ヒストリック・コレクションなどの高級モデルには、美しい杢材の入手性が比較的容易なソフト・メイプル(別名ウエスタン・メイプル)が使われている。これはハード・メイプルよりも軽く、軟らかい材なので音色にも影響を与える。
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