朝日ダム濁水問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/01/22 09:20 UTC 版)
朝日ダム建設・管理において漁業問題は避けて通れない問題であった。建設の際には飛騨川の漁業権を持つ益田川漁業協同組合が頑強に反対した。結局1,288万円(当時)の漁業補償費とマス養殖施設費を補償することで妥結を見た。 ところが1965年(昭和40年)7月、豪雨によって飛騨川が増水した際に朝日ダムから放流された水が飛騨川に長期間濁水をもたらし、漁業に大きな影響を与えた。当時高根第一ダムが飛騨川最上流部に建設されていたが、この建設工事と朝日ダムが諸悪の原因として益田川漁協は強く反発。濁水の早期の解決を求め、これが解決されない限りは飛騨川流域における新規の水力発電事業に一切協力しないという強硬な姿勢を採った。折から1967年(昭和43年)に発生した飛騨川バス転落事故においても、濁水による捜索活動の難航が問題になっていたが益田川漁協はこの原因も朝日ダムの濁水放流が原因であるとしてマスコミなど世論に訴え、大きな社会問題に発展した。 管理する中部電力は対策として朝日貯水池に新たに表面取水設備を持つ取水塔を建設した。これは比較的澄んでいる貯水池表面の水を選択的に取水し、放流することで下流への濁水を最小限に抑える目的を持つ設備で、現在は多くのダム湖に設置されている。この対策により漁協は交渉のテーブルに着くことにはなったが、補償金を巡る対立は解消されず建設中であった高根第一ダムのコンクリート骨材(原材料)生産停止を法的手段、そして実力行使で阻止すると表明し物騒な雰囲気になった。 こうした漁協の実力行使表明に対し事態を憂慮した岐阜県は事態を収拾するため中部電力と益田川漁協間の斡旋を行い、最終的に400万円の「朝日ダム濁水損失補償」金を高根第一ダムの漁業補償金に上乗せすることで三年にわたる朝日ダム濁水問題は解決を見た。
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