月での観測と実験
月は天体観測の「理想郷」
月は天体観測にたいへん適した環境をそなえています。空気がないので、星からの光が途中で吸収されたり散乱したりしないで月面上に届くという利点があります。また、夜側は安定した低温に保たれるので、観測の精度の向上が期待できます。月の裏側では、雑音となる人工の電磁波がないこともまた利点の1つといえます。このほか、地盤が安定していること、自転周期の関係で夜が14日間続くので、継続した観測ができることなどがあげられます。クレーターの中にパネルを敷きつめれば、直径数10kmものパラボラアンテナを簡単につくることもできます。
NASAの「スペースガード計画」でも大きな役割を果たす
また、NASAは地球に衝突し得る小天体が現れた場合にどう対応するか、という問題に真剣にとりくんでいます。小天体を早期にキャッチし、レーザーなどで破壊するという「スペースガード計画」は考えられている案の中の1つです。この計画においては、月から観測すれば、その小天体がたとえ太陽方向から接近してきたとしても、地球上よりはるかに高い精度で観測することが可能であると期待されています。
月面基地は、恒常的な実験設備として利用可能
月には空気がないので電磁波の吸収・放射がなく、約2週間の周期で昼と夜が続くといった特徴があります。また、重力が地球の1/6という特異な環境をもちます。太陽光やヘリウム3など、エネルギー源も豊富です。そのため、スペースシャトルでの宇宙実験などとちがい、月基地は恒常的な実験設備として使えるという大きなメリットがあります。たとえば医学的研究としては、重力の少ない環境での体内のカルシウムの流出のようす、関節炎などのような、重力が治ゆの障害になっている病気の治療、心臓の機能と血液循環に関する研究などに成果が期待されています。
1/6の重力をいかした研究
医学以外にも、工業分野や素材分野の研究・実験にも成果が期待されています。豊富な資源や1/6という重力、酸素や水がないため資材が腐食しないといったメリットを利用して、研究設備の建設などがおこなわれることでしょう。
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