暗号技術としてのROT13
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/21 05:18 UTC 版)
「ROT13」の記事における「暗号技術としてのROT13」の解説
ROT13を暗号としてみると、古典的な暗号である「シーザー暗号」という単換字式暗号の一種に属する。真面目にセキュリティーを求める場合には用いられない。一定のシフト値 (13) を用いるため、暗号鍵なしで簡単に解読することができる。解読するにはROT13が用いられているということさえわかればいい。それどころか、ROT13が使われていることがわからなくても、他の単換字式暗号と同様、(エドガー・アラン・ポーの『黄金虫』に出てくるような)頻度分析やパターンとなる語 (pattern word) の追求だけで解読できる。 ROT13の実際の効果は、読者が自覚的にソフトを操作するなどして(ROT13復号コマンドを実行する等)読まなければならないという点である。信書を権利のない読み手から守ることではなく、うっかり読者の目に入ってしまうことを避けるための安全装置として、書籍や映画のネタばれ批評のような場合に用いられる。 セキュリティーを求める用途にはあまりに不適なため、ROT13は弱い暗号の代名詞として用いられるようになった。たとえば「今日では、56ビットのDESはROT13並だ」等。「二重ROT13」「ROT26」「2ROT13」(要するに全然暗号化していない平文のこと)という用語もユーモアを込めて用いられる。中には贋学術論文をでっちあげた人までいる("On the 2ROT13 Encryption Algorithm" (PDF))。ROT26はアメリカ合衆国のデジタルミレニアム著作権法 (DMCA) をからかうためにも用いられた。あるネットワークユーザ達はネットワーク上のフォーラムに投稿する文章に「この文書はROT26で暗号化されている。回避操作は告訴対象である」 ("Encoded with ROT26 — circumvention will be prosecuted!") という警告文をつけた。DMCAは複製防止システムを回避する事(コピーガード外し)を広範に禁止したが、複製防止システムの中にはもともとセキュリティー的に甘い暗号を用いたものがしばしば見られるのである。トリプルDESにからんで「三重ROT13」も時折見る。もちろんROT13そのものである。 2001年にロシア人暗号研究者のドミトリ・スクリャーロフ (Dmitry Sklyarov) が逮捕された。eBookの複製防止システムの弱点について詳細を発表した後のことであった。eBookはデジタル的な(電気的な)書物のフォーマットであるが、著作権を守るための技術的手段を含むことがある。eBook出版社の一つ、New Paradigm Research Group (NPRG) は自分たちの報告書を暗号化する方法としてROT13を用いていた。アドビはeBookソフトウェア開発キット (SDK) にROT13を用いた玩具的例題を含めているが、NPRGがこれを誤解して、ROT13をまともな暗号法とでも思ったのだろう ( ) 。
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