旧姓併記とその問題点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 02:20 UTC 版)
旧姓通称使用における問題への対応として旧姓を併記可能とする動きがある。2015年から役員登記において、2019年からマイナンバーカード、住民票、運転免許において、2021年から特許出願において、旧姓併記が可能となった。また、日本国旅券(パスポート)は、これまでも必要な事情がある場合には旧姓を括弧書きで付記することが認められることがあった が、2021年4月より、条件が緩和され、希望すれば誰でも併記可能となった。国民健康保険では通称の使用は認められないが、2021年の時点で、一部の自治体では国民健康保険証への旧姓併記が可能となっている。 問題点 これらに対し、たとえ旧姓を併記できたとしても、婚姻により強制的に氏を変更させられ新たな氏を世間に公表させられることはプライバシー侵害である、アイデンティティの問題は解決されない、等の主張がある。また、選択的夫婦別姓の法制化がなされれば不要な、旧姓通称使用のための旧姓併記などを住民票等で可能とするシステム改修費用も莫大、との指摘もある。 また、住民票やマイナンバーカードなどへの旧姓併記後も、旧姓で口座開設や契約ができる範囲は一部にとどまる、と報道されている。マイナンバーカードについては、旧姓を併記しているとワクチン接種の電子証明が発行できない等のトラブルが当初報道された。現行法規制との整合性がネックになるなど、政府による民間への協力要請にも限界があるとの指摘もある。役員登記における旧姓併記は中途半端で、より一層不便であるとの主張もある。日本国旅券に旧姓を表示した場合でも、この処置は「国際規格に準拠しない例外的な処置」でありICチップには旧姓名は入らず、旧姓でビザ(査証)をとることは困難であり、海外での仕事や生活に支障が及ぶことが多いとの指摘がある。 さらに、外務省は2019年にパスポートへの旧姓併記が複数の姓を公証しているように見えるため詐欺行為等の犯罪に利用する者が現れる可能性を指摘している。複数の旧姓を持つ場合に、現行の旧姓併記はパスポートと住民登録などで異なる旧姓を用いることができるといったことから、金融等におけるリスクの指摘もあるとされる。
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