日本での裁判と各国領事の反応
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/31 09:13 UTC 版)
「マリア・ルス号事件」の記事における「日本での裁判と各国領事の反応」の解説
この報告を受けた大江は、マリア・ルスに乗船している清国人救出のため法手続きを決定。出航許可を申請していたマリア・ルスは、旧暦7月4日に横浜港からの出航停止を命じられた。その後この出航停止に関しては、ポルトガル領事をはじめとした数国から抗議の申し入れがあり、7月20日には、ポルトガルとイタリア領事傍聴のもとでヘレロ船長の裁判が行われた。 辮髪を切られていた者や手錠され拷問を受けた痕が残る清国人への過酷な取扱いについて審議が及ぶと、ヘレロ船長は脱走や放火を企てた者達に対する罰として行ったと述べた。船長側弁護人イギリス人のフレデリック・ヴィクター・ディキンズは、仮にこの船が奴隷船として奴隷を乗せていようが、マカオ及び清国海上で行われた犯罪は日本政府の所轄ではない。買奴は、万国公法にあたる海賊行為にあたらない上に、日本でも禁止していないではないか。奴隷運搬船の出航停止について速やかに解除し、日本側に出航停止中の保証金を要求する、との意見書を提出した。 マリア・ルスの船長は訴追され、神奈川県庁に設置された大江卓を裁判長とする特設裁判所は、7月27日(8月30日)の判決で、港内での乗客虐待に対する厳重処罰として清国人の解放を条件にマリア・ルスの出航許可を与えた 。 しかし、船長は判決を不服としたうえ、清国人の「移民契約」履行請求の訴えを起こし、清国人をマリア・ルスに戻すよう主張した。これに対し2度目の裁判では移民契約の内容は奴隷契約であり、人道に反するものであるから無効であるとして却下した。 裁判により、清国人は解放され清国へ9月13日(10月15日)に帰国した。清国政府は日本の友情的行動への謝意を表明した。
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