新人錬成山行
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/11 22:59 UTC 版)
「東京農業大学ワンダーフォーゲル部死のシゴキ事件」の記事における「新人錬成山行」の解説
同部では例年5月頃新人部員を対象とした、「新人錬成山行」を行ってきた。同部では、新人錬成山行の目的を下記のように設定しており、激しいシゴキを伴うものであった。 同部は新人錬成山行の目的を、各新人に肉体的精神的苦痛を伴う程度の行動をなさしめ、その苦痛を乗り越えて団体山岳行動に耐え得る気力体力を涵養することにおいたが、山行中上級生が新人を指導するにあたつては、新人の疲労状態などの判断は、当該新人についた各上級生の個人的判断に任され、行進中遅れたり、休憩地に遅れて入つて来たりする者や、指示された作業をしない者は、よほどの外傷でもあつて一見してこれ以上の行動が困難と思われる場合の外は、原則として気力が不足しているものとして、叱咤激励し、ザツクを押したり、手足を引つ張つたりすることはもとより、平手、手拳、紐、木棒により直接身体を殴打し、登山靴のまま足蹴りするなどの所謂シゴキをなして肉体的苦痛感や、精神的屈辱感を与えて、行動に駆り立てており、この様な体験を経て上級生部員となつた者は自己が苦難に耐えて強い部員になれたという自信から、同部のシゴキを安易に肯定し、転じて上級生部員として新人に対しシゴキをなしており、このことがさして疑念を抱かれずに踏襲され、同部の伝統的(慣行が本来の伝統となる直前のもの)な錬成方法となつていたのである。 — 東京地方裁判所 昭和40年(合わ)182号 判決 このような背景のもと、上級生部員等は、新人部員に対して下記のように故意に疲労させた上で、上記の暴行に及んだ。 上級生部員等は新人である一年生部員等に上級生より重い荷物を背負わせ、歩度を早め、時には駈足登山をさせ、青山ホトリと称するおどりをおどらせ、また到着の遅れた者に駈足をさせ、疲れ切つて目的地に到着した者に荷物を背負わせたままキアイを入れると称して、上級生の呼びかけに応じて何回も「オス、オス」と答えさせるなど故意に疲労させるような行為をした上、疲労のため歩度がにぶつたり落伍したりした一年生に対して事実摘示の如き暴行を加えたもの — 東京家庭裁判所 昭和40年(少)14801号 決定 なお、本事件が起こる前年の1964年の新人訓練では、参加した1年生20名全員が、靴や服は皆ボロボロにされた上に、帰宅後1週間も寝込む有様であった。なお、1964年の新人訓練に参加した新人のうち2年生部員に残った者は1名しかいなかったことが報道されているが、判決で認定された加害者には2年生部員が多数いる。
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