教皇選挙 (映画)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/11 16:03 UTC 版)
教皇選挙 | |
---|---|
Conclave | |
監督 | エドワード・ベルガー |
脚本 | ピーター・ストローハン |
原作 | ロバート・ハリス |
製作 |
テッサ・ロス ジュリエット・ハウエル マイケル・A・ジャックマン アリス・ドーソン ロバート・ハリス |
製作総指揮 |
トーマス・アルフレッドソン エドワード・ベルガー レイフ・ファインズ スティーヴン・レイルズ グレン・バスナー アリソン・コーエン ミラン・ポペルカ ベン・ブラウニング レン・ブラバトニック ダニー・コーエン |
出演者 |
レイフ・ファインズ スタンリー・トゥッチ ジョン・リスゴー イザベラ・ロッセリーニ |
音楽 | フォルカー・ベルテルマン |
撮影 | ステファーヌ・フォンテーヌ |
編集 | ニック・エマーソン |
製作会社 |
フィルムネイション・エンターテインメント インディアン・ペイントブラッシュ |
配給 |
![]() ![]() ![]() |
公開 |
![]() ![]() ![]() |
上映時間 | 120分 |
製作国 |
![]() ![]() |
言語 |
英語 イタリア語 ラテン語 スペイン語 |
製作費 | $20,000,000[2] |
興行収入 |
![]() ![]() |
『教皇選挙』(きょうこうせんきょ、原題: Conclave)は、2024年制作のアメリカ合衆国・イギリスのミステリー映画。
ローマ教皇死去に伴って行われることとなった教皇選出選挙(コンクラーヴェ)の舞台裏と内幕に迫ったミステリ[4]。原作はロバート・ハリスの小説『教皇選挙』(Conclave、未邦訳)で、原作から登場人物の設定に変更が加えられている。
あらすじ
![]() | この節にあるあらすじは作品内容に比して不十分です。 |
ある日、カトリック教会のトップにしてバチカン市国の国家元首であるローマ教皇が、心臓発作のため突如として急死してしまう。教皇死去の悲しみに暮れる暇もなく、イギリス出身でローマ教皇庁首席枢機卿を務めるトマス・ローレンス枢機卿は枢機卿団を招集し、次のローマ教皇を選出する教皇選挙(コンクラーヴェ)を執行することとなった。
100人以上の枢機卿がコンクラーヴェが行われるシスティーナ礼拝堂に集まる中、有力候補者として
- アメリカ出身でバチカン教区所属、リベラル派最先鋒のベリーニ枢機卿
- カナダ・モントリオール教区所属、穏健保守派のトランブレ枢機卿
- ナイジェリア教区所属、初のアフリカ系教皇の座を狙うアデイエミ枢機卿
- イタリア・ベネチア教区所属、保守派にして伝統主義者のテデスコ枢機卿
の4人の名が取り沙汰される中、メキシコ出身で昨年に前教皇によって新たに任命されたばかりのアフガニスタン・カブール教区のベニテス枢機卿が開始直前に到着する。
かくしてコンクラーヴェが始まるが、枢機卿団の票が割れていく水面下では陰謀や差別、スキャンダルの数々が犇めいていた。裏で信仰に関する悩みを抱えるローレンスはそれらに苦悩を深めつつもコンクラーヴェを執行していくが、新教皇選出を目前とする中、厳戒態勢が敷かれたバチカンを揺るがす大事件が勃発する。
長い本番
フランシスコ教皇が心臓発作で崩御した後、枢機卿会議は英国出身のトーマス・ローレンス首席枢機卿の指揮の下、後任を選出するために招集された。有力候補として浮上したのは、進歩主義改革派のアメリカ合衆国出身のアルド・ベリーニ枢機卿、社会保守派のナイジェリア出身のジョシュア・アデイェミ枢機卿、穏健派のカナダ出身のジョセフ・トレンブレイ枢機卿、そして伝統主義者のイタリア出身のゴッフレド・テデスコ枢機卿の4人である。
教皇庁長官のヤヌシュ・ヴォジニャク大司教はローレンスに対し、教皇が死去前にトレンブレイ枢機卿に辞任を要求したと告げるが、トレンブレイ枢機卿はこれを否定する。一方、ベリーニ枢機卿は支持者たちに対し、テデスコ枢機卿の教皇位継承を阻止するのが目的だと語る。ローレンスは、前年に教皇から枢機卿長(イン・ペクトーレ)に任命されていたメキシコ生まれのカブール大司教ヴィンセント・ベニテス枢機卿が土壇場で到着したことに驚く。
ローレンスは審議の冒頭、即興の説教で不確実性を受け入れるよう学院に促したが、これは教皇就任への野望を公然と宣言したものと解釈する者もいる。当選に必要な三分の二の多数を獲得した者はいなかったが、アデイェミはテデスコとトレンブレイをリードし、進歩派の票はベリーニとローレンスが分け合った。ローレンスの助手であるレイモンド・オマリー神父は、ベニテスがジュネーブで診察を受けるための費用を教皇が支払ったことを知る。ベニテスは後にこの診察をキャンセルした。
2日目
学院はアデイェミと、ナイジェリアからローマに移送されたばかりの修道女シャヌミとの口論を目撃する。ローレンスはシャヌミと話をし、シャヌミは不倫関係から息子を出産したことを告白する。アデイェミは問い詰められ、その事実を認める。ローレンスは秘密主義に縛られていたが、ひそひそと情報操作によってアデイェミの立候補は頓挫する。ベリーニは渋々ながらトレンブレイを支持することにする。
ローレンスは、仕出し屋と家政婦の長を務める修道女アグネスと協力し、シャヌミの転勤はトレンブレイが手配したことを知る。問い詰められると、トレンブレイは教皇の要請でそうしたと主張する。ローレンスは教皇の封印された部屋に侵入し、トレンブレイが枢機卿たちに投票の報酬として金銭を支払っていたことを示す文書を発見する。彼はその文書をベリーニに見せるが、ベリーニはその存在を明かさないよう懇願し、口論となる。
3日目
ローレンスとアグネスはトレンブレイの行動を公表し、トレンブレイは事実上、立候補から外れる。ベリーニと和解したローレンスは、テデスコに対抗することに同意する。次の投票でローレンスは自らに投票するが、投票する前に爆発が起こり、システィーナ礼拝堂が損傷する。学院はこの爆発がヨーロッパ各地で発生した一連の自爆テロ事件の一つであったことを知る。テデスコがイスラム教に対する宗教戦争を主張する一方で、ベニテスは暴力に暴力で対抗することに反対し、共通の宗教的使命よりも政治的思惑を優先する人々を非難する。投票が再開され、割れた窓から光が差し込む中、大学は圧倒的多数でベニテスを選出。ベニテスは教皇名「イノセント」を選んだ。
ローレンスは当初は熱意に溢れていたが、オマリーに呼び出され、ベニテスの予約がキャンセルされたことについて話し始める。ローレンスに詰め寄られたベニテスは、生まれつき子宮と卵巣を持っていたものの、虫垂切除手術でその存在が明らかになるまでその存在を知らなかったことを明かす。予約は腹腔鏡による子宮摘出手術だったが、彼は神に創造されたままの自分であり続けるべきだと考え、手術を断念した。ローレンスはバチカンの敷地内を歩き回り、インノケンティウス教皇の選出を歓声で祝う群衆の声に耳を傾け、部屋に入り窓を開けると、下の中庭で3人の若い修道女がおしゃべりしているのが目に入る。
登場人物・キャスト
- トマス・ローレンス枢機卿
- 演:レイフ・ファインズ
- 本作の主人公。ローマ教皇庁首席枢機卿。
- 突然の教皇逝去の悲しみに暮れる暇もなく、首席枢機卿としてコンクラーヴェを主宰する。実は信仰に関する悩みを抱えており、前教皇に辞職を申し出ていたが慰留されていた。ややリベラルな傾向を持つ一方、自身は教皇には相応しくないとは考えているが、コンクラーヴェで一定程度の票を集めることになる。
- 原作におけるヤコポ・ロメリー枢機卿に相当するキャラクター。
- アルド・ベリーニ枢機卿
- 演:スタンリー・トゥッチ
- バチカン教区所属。ローレンスの友人。
- 知識人でリベラル派の最先鋒。教会内の自由主義者に支持基盤を有している他、改革派であった前教皇とも良好な関係を持ち、コンクラーヴェ前の新聞では次期教皇の最有力候補とも報じられていた。しかし、そのリベラルな考え故に、始まったコンクラーヴェでは支持をあまり集められずに苦戦する。
- ジョー・トランブレ枢機卿
- 演:ジョン・リスゴー
- カナダ・モントリオール教区所属。
- 穏健派で、考え方としては保守派ながらリベラルな性向も併せ持つ人物。北アメリカの枢機卿を中心に支持を集めている。一方でウォズニアック大司教によると前教皇が亡くなる直前に辞任を要求したとされており、またオマリーの調査によると前教皇が彼に関する何らかの調査書を受け取ったという。
- ゴッフレード・テデスコ枢機卿
- 演:セルジオ・カステリット
- イタリア・ベネチア教区所属。
- 保守派にして伝統主義者。その考え方故に改革派の前教皇との関係が悪く、前教皇の施策に対する主要な反対者の一人として知られていた。一方でスキャンダルとは無縁の存在である他、教会内の保守派から支持を集めている。イタリア人であり、数十年も誕生していないイタリア人ローマ教皇になることに意欲を示している。
- ジョシュア・アデイエミ枢機卿
- 演:ルシアン・ムサマティ
- ナイジェリア教区所属。
- 史上初となるアフリカ系教皇の座を狙う人物。保守的な考えの持ち主であるとされるが、それ故に支持基盤であるアフリカなどの枢機卿に加えて保守派の票も集め、コンクラーヴェで優位に選挙戦を進める。
- ヴィンセント・ベニテス枢機卿
- 演:カルロス・ディエス
- アフガニスタン・カヴール教区所属。
- 多くの紛争地域や教会の勢力が弱い地域での奉仕を行ってきた人物。その功績を評価されて昨年に教皇によって枢機卿に任命されるが、その活動経緯から秘密の任命であり、ローレンス達もその事実を知らなかった。コンクラーヴェ開始直前に任命状を携えて到着し、コンクラーヴェに参加する。
- サラディン枢機卿
- 演:メラーブ・ニニッゼ
- モンシニョール・レイモンド・"レイ"・オマリー
- 演:ブライアン・F・オバーン
- シスター・アグネス
- 演:イザベラ・ロッセリーニ
- ウォズニアック大司教
- 演:ジャセック・コーマン
評価
2025年1月19日時点で、映画批評集積サイトのRotten Tomatoesには294件のレビューがあり、批評家支持率は91%、平均点は10点満点で8.0点となっている。観客支持率は86%、平均点は5点満点で4.3点となっている。サイト側による批評家の見解の要約は「教皇に関する物語を完璧な演出で描き、レイフ・ファインズはキャリアハイライトとも言える演技を披露する。知的なエンターテインメントを求める観客にとってはまさに神からの贈り物だ。」となっている[5]。また、Metacriticには54件のレビューがあり、加重平均値は79/100となっている[6]。
第97回アカデミー賞において作品賞含む8部門にノミネートされ、ピーター・ストローハンが脚色賞を受賞している[7]。第82回ゴールデングローブ賞においても脚本賞を受賞している[8]。また、英国アカデミー賞では作品賞と英国作品賞を、全米映画俳優組合賞では最高賞となるキャスト賞を受賞した。
教皇フランシスコ死去による影響
くしくも上映期間中の2025年4月21日にフランシスコ教皇が亡くなったことを受けて、本作の題材となったコンクラーヴェが行われることとなった。また、アメリカにおける視聴者数が前週比3,200%増となった。アメリカではAmazon Prime Videoで配信されており、21日まではレンタル料を支払う必要があったものの、合計視聴時間が1週間で96万6,000時間から690万時間へと急増。さらに22日から見放題配信が始まると、1,830万時間へと激増した[9]。
日本でも本作品の上映期間と重なったことから、観客数が急増[10]。フランシスコ死去から3日後となる2025年4月24日には前週対比倍増となる216%を記録したほか、同月28日には興行収入が5億円を突破したことを同国での配給を担当しているキノフィルムズが発表した[11][12]。
コンクラーヴェに参加した枢機卿の一部も参考とするために本作を鑑賞したという。後に教皇に選出されレオ14世を名乗ることになるロバート・プレヴォストも振る舞い方のために選挙前に鑑賞した旨を兄に語っている[13]。前田万葉は選挙の詳細な手順について知らなかったことから周囲に勧められて鑑賞し、選挙の流れを知るのに参考になったと発言している[14]。
脚注
- ^ “「西部戦線異状なし」エドワード・ベルガー監督×レイフ・ファインズ! 「教皇選挙」25年3月20日公開決定”. 映画.com. (2024年11月20日) 2024年12月19日閲覧。
- ^ “Venom: The Last Dance Hopes To Boogie To $150 Million Global Opening – Box Office Preview”. Deadline Hollywood (2024年10月22日). 2024年10月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年10月23日閲覧。
- ^ a b “Conclave”. Box Office Mojo. 2024年12月18日閲覧。
- ^ “ローマ教皇を決める選挙の裏側で…レイフ・ファインズ主演「教皇選挙」3月公開”. 映画ナタリー. (2024年11月20日) 2024年12月19日閲覧。
- ^ “Conclave - Rotten Tomatoes” (英語). www.rottentomatoes.com (2024年10月25日). 2025年1月19日閲覧。
- ^ Conclave
- ^ “【アカデミー賞速報】脚色賞を「教皇選挙」が受賞、レイフ・ファインズ主演のミステリー”. 映画ナタリー. 2025年3月10日閲覧。
- ^ “『教皇選挙』が第82回ゴールデングローブ賞 脚本賞を受賞”. kino films. 2025年3月10日閲覧。
- ^ “映画『教皇選挙』視聴者数、教皇死去で3,200%増”. シネマトゥデイ. 2025年4月28日閲覧。
- ^ “ローマ教皇死去で関心高まる…映画「教皇選挙」の観客が倍増 上映回数増やし期間も延長”. 南日本新聞 (2025年4月28日). 2025年4月29日閲覧。
- ^ “映画「教皇選挙」興収5億円突破 ローマ教皇死去で前週対比200%超を記録”. スポーツ報知 (2025年4月28日). 2025年4月29日閲覧。
- ^ “映画『教皇選挙』興行収入5億円突破! 公開5週目にして前週比200%を記録”. クランクイン! (2025年4月28日). 2025年4月29日閲覧。
- ^ “新ローマ教皇レオ14世、コンクラーベ直前に映画『教皇選挙』鑑賞していた”. シネマトゥディ (2025年5月9日). 2025年5月9日閲覧。
- ^ 47NEWS (2025年5月7日). “ローマ教皇を選ぶコンクラーベ、投票資格がある日本人枢機卿ってどんな人? 「田舎の司祭になりたかった」被爆2世、大阪の前田万葉さん”. 47NEWS. 2025年5月9日閲覧。
関連項目
外部リンク
- 教皇選挙 (映画)のページへのリンク