承諾の意思表示に関する問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/24 00:33 UTC 版)
「シュリンクラップ契約」の記事における「承諾の意思表示に関する問題」の解説
日本においては、隔地者間の契約は、承諾の通知を発したときに成立する(民法526条1項)が、申込者の意思表示又は取引上の慣習により承諾の通知を必要としない場合には、契約は承諾の意思表示と認めるべき事実があった時に成立する(同条2項)とされている。シュリンクラップ契約において「申込者の意思表示・・・により承諾の通知を必要としない場合」に該当することは問題ないとしても、媒体の包装を開封することが「承諾の意思表示と認めるべき事実」と言えるかが問題となる。 無効とする見解 ユーザーがパッケージを開封する行為は契約をするためでなく内容物を取り出すためであって、またそのことは相手方たるベンダーにとっても明らかまたは知り得べかりし事情であり、また、事前に意思表示の方法について別途の契約が成立していないかぎり、申込者の方で開封行為を意思表示と認めるべき事実と勝手に指定することはできない、したがって少なくとも契約承諾の効果意思を欠いた瑕疵ある意思表示の相手方悪意有過失の場合として心裡留保(民法93条但書)にあたる、などとしてシュリンクラップ契約は無効とする見解である。 ユーザー登録行為により有効とする見解 媒体の包装を開封する行為を承諾の意思表示と認めることはできないとしても、ユーザー登録の手続をすれば承諾の意思表示があったとする見解である。もっとも、この見解に対しては、通常はバージョンアップなどのユーザーサポートを得る目的でユーザー登録をするのであり、ユーザー登録すれば使用許諾契約に承諾するものとみなす旨の条項がない限り、承諾の意思表示があったとみなすことは無理という批判もある。 普通取引約款の拘束力の問題とする見解 普通取引約款の拘束力の根拠については見解が分かれているものの、普通取引約款自体が無効とされているわけではないという理解を前提に、契約条項の内容のコントロールの問題であるとする見解である。しかし、普通取引約款の拘束力が問題となるのは、約款の内容を認識していなくても認識しようと思えば認識しえた状態で外形的に承諾とみなされる行為があったことが前提である。これに対し、シュリンクラップ契約の効力の問題は、そもそも承諾とみなされる行為があったか否か自体が問題となっているのであり、問題点を取り違えているという批判が成り立つ。 商慣習の問題とする見解 代金支払後に契約条件を示される取引はシュリンクラップ契約が問題となる前から存在しており(チケット購入の際の裏面の記載など)、商品を消費者に提供するための合理的な商慣習であるとする見解である。
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