手続の実際
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/03 13:55 UTC 版)
出願審査の請求を受けて、審査官が審査を行う。その際、先行技術文献調査は登録調査機関に業務委託外注している。登録調査機関では、特許庁が主催する調査業務実施者(検索者または特許サーチャーとも呼ばれる)と調査業務指導者(検索指導者とも呼ばれる)の講習を受講し、それぞれの講習内の特許庁審査官による試験に合格した者のみ当該作業の実務を行なっている。先行技術文献調査は、高度検索閲覧用機器を用いて、クラスタ検索と呼ばれる特許文献検索を、全文(テキスト)検索、フリーワード検索(審査官フリーワード)、Fターム検索、FI検索、CPC検索等を用いて行なわれる。そして、特許できない理由が発見された場合には、拒絶の理由を通知して(「拒絶理由通知」という)、一定の期間を指定し、出願人に意見を述べたり出願内容を補正する機会を与える(特許法50条、17条の2)。具体的な拒絶理由は特許法49条各号に列挙されており、これ以外の理由で拒絶理由・拒絶査定を受けることはない。審査官の恣意を防ぐためである。 拒絶理由に対して、意見等が提出されない場合や、提出された補正・意見等を勘案しても拒絶理由が解消されなかった場合には、審査官は「拒絶をすべき旨の査定」(通称「拒絶査定」、特許法49条柱書)を行う。したがって、反論の機会もなく、突然に拒絶査定がされることはない。 また、拒絶理由が発見されなかったり解消された場合には、「特許をすべき旨の査定」(「特許査定」、特許法51条)が行われる。 実際には、審査請求された出願のほとんどに対して拒絶理由通知が発せられており、それに対する応答(意見と補正の内容)が特許の成否を分けることが少なくない。拒絶理由通知に対して、出願人がとる対応として、意見書(特許法50条)や手続補正書(特許法17条、17条の2)の提出、出願分割(特許法44条)、出願変更(特許法46条)、当該出願を基礎とする国内優先権の主張を伴った新たな出願(特許法41条)、出願の放棄や取り下げなどがある。分割出願は、単一性違反(特許法37条)の拒絶理由を解消するために有効である。 出願する上で、重要となるのは、多くの観点からの請求項を含む特許請求の範囲や、上位概念的な請求項から実施例に対応した請求項まで多段階にわたる特許請求の範囲を、出願時に作成しておくことである。このような幅の広いクレームを作成することによって、審査上の進歩性の判断ラインを見極め、有効な特許を取得することができる。 また、審査請求時に、自社や他社の製品動向に沿って特許請求の範囲を補正することも有効である。ただし、補正にあたっては、新規事項の追加にあたることがないように留意が必要である。
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