感染経路・潜伏・発症
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/19 17:16 UTC 版)
「猫後天性免疫不全症候群」の記事における「感染経路・潜伏・発症」の解説
「猫免疫不全ウイルス感染症」も参照 FIVウイルスの主な感染経路は、ケンカなどによる咬み傷からの体液の接触感染が考えられる。自然界では人間のように交尾によって感染したと断定できる報告はない。出産時の母子感染も確認されている。HIVと同じレトロウイルス科レンチウイルス属に分類されるが、ネコおよびネコ属に特異的なウイルスであり、犬や人に感染することは無い。 疫学的には、国内のFIV抗体陽性率は約12%とされているが、野良猫におけるFIVの保有率はこれよりも高いと考えられる。2006年10月にアメリカのワシントンで開催された国際ネコレトロウイルス研究シンポジウムにおいて、フロリダ大学のグループは興味深い疫学調査結果を発表している。それは、アメリカの獣医病院に来院し検査を受けた67,963匹のネコを調べたところ、「FIV陽性ネコの生存率(survival rate)は、FIVに陽性と診断されてから1年でおよそ約20%が死亡する(発症していないネコの安楽殺を含む)ものの、それ以降はFIV陽性ネコ群と陰性ネコ群では生存率に大きな差は見られない。」というものである。ドイツやオーストラリアでなされた疫学調査からも、FIV陽性ネコと陰性ネコの平均寿命に有意差は見られていない。 このことからも明らかなように、FIV陽性ネコのすべてが発症するわけではない。FIV感染により免疫が抑制されるが、HIVほどではない。またたとえ免疫が抑制されても、FIVの感染が直接病気を引き起こすわけではなく、FIV感染による免疫抑制に伴う他の病原体の感染により発症する。SPFネコにおける感染実験においてもFIV単独で発症した例はほとんどない。FIVの受容体(ウイルス感染に必要な分子)は、CD134という分子であり、これは抗原刺激に伴って発現されるCD4陽性T細胞の副刺激分子の一つである。従って様々な病原体、もしくは非病原性のウイルスや細菌などの抗原刺激によりFIVが増殖可能なCD4陽性T細胞が増加し、それに伴い体内のFIVの量も増えるものと考えられ、抗原刺激に乏しい(クリーンな)環境においてはネコの体内でのウイルス量は低いままであると考えられる。
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