後の物語への影響
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/26 16:01 UTC 版)
ゴードンとレンズブルクは、近東における英雄の死に続く7年間の飢饉というモチーフは、ウガリット神話のアハト(英語版)の死の物語にも見られ、創世記のヨセフのヘブライ語の物語にも、何者かが7年間の飢饉を予測し事前に物資を貯蔵させるという内容がある。 ドイツの古典学者ヴァルター・ブルケルトによれば、イシュタルがギルガメシュに拒絶された後、天の牡牛を要求するためにアヌのもとを訪れる場面は、イーリアスの第5巻の場面と似通っている。 ギルガメシュ叙事詩では、イシュタルは母親のアントゥに不満を述べているが、アヌには穏やかに叱責されている。 イーリアスでは、ギリシャでイシュタルに相当するアフロディーテが、息子のアイネイアースを救おうとしている間にギリシャの英雄ディオメーデースによって負傷する。 アフロディーテはオリンポス山に逃げ、そこで母親のディオーネーに泣きつき、妹のアテナに嘲笑され、父親のゼウスには穏やかに叱責される。 物語の類似だけでなく、 アントゥがアヌの女性的であるように、ディオーネーの名前がゼウス自身の女性化であるという事実も重要である。 ディオーネーは、ゼウスの配偶者が女神ヘラになるイーリアスの残りの部分には登場しない。 したがって、ブルケルトはディオーネの場面は明らかにアントゥの借用であると結論付けている。 英国の古典学者グラハム・アンダーソンは、オデュッセイアでオデュッセウスの部下がヘリオスの牛(英語版)を殺し、ギルガメシュ叙事詩のエンキドゥのように、これを理由に神々によって死刑を宣告されたと述べている。 言語学者のM. L. ウェスト(英語版)は、どちらも殺された生き物が牛であるという点以外にも、類似点が多いと述べている。 どちらも死んだのは主人公の仲間であり、その死によって主人公は一人で旅を続けることを余儀なくされる。 またどちらの場合も、誰かが罪を被り死ぬことについて神々の議論がおこなわれ 、オデュッセイアで殺された牛の復讐をせよというヘリオスからゼウスへの脅しは、ギルガメシュ叙事詩でのアヌに対するイシュタルの要求と非常によく似ている。 ブルース・ラウデンは、天の牡牛を殺した直後のエンキドゥのイシュタルへの挑発を、オデュッセイアの第9巻にあるオデュッセウスから巨人ポリュペーモスへの挑発と比較している。 どちらも、勝利後の英雄の傲慢さが神の呪いを招いている。
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