待遇と生活
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/21 00:22 UTC 版)
"below stairs"とは、家事使用人の生活を端的に表す言葉である。「階下」という言葉の通り、家事使用人は多くの場合、地下室で生活をしていた。これに対し、地上で生活する雇い主一家は“up stairs”と呼ばれた。男性使用人と女性使用人の両方が雇われている場合、女性使用人は屋根裏に寝泊まりすることのほうが多かったにせよ、その待遇は地下室と大差なかった。また家事使用人について特筆すべきはその給与である。19世紀を通じて家事使用人の給与はほとんど変化がなかった。これは当時の経済成長からみて異様に思われる。事実、労働者の平均賃金は1850年から1900年の間に1.8倍にまで上昇している。しばしば紅茶、砂糖、ビールといった嗜好品については別途費用が支給されることもあったが、それを加味しても給与は決して十分とは言えなかった。原則的に食費が必要なく、蝋燭の燃えさし、客人からのチップなどの、時には給金に匹敵した職業上の「役得」があってはじめて家事使用人は生活していくことができた。 都市に比べて農村では家事に加えて農業や酪農にかり出されたり、地主貴族に比して中流の家庭では元を取ろうとより酷使される傾向があったりと、地域や雇い主によって細かな差はあったが、家事使用人の仕事は総じてオーバーワークであった。比較的条件の良い貴族の屋敷でさえ、厳密な時間管理と巧妙な連携、そして個人の奮闘があって初めて作業をこなすことができた。低賃金と重労働のため、家事使用人は常によりよい条件の職場を求めており、次々と世帯を渡り歩くこともしばしばであった。
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