弱酸の滴定
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/08/01 15:55 UTC 版)
弱酸の溶液を強塩基で滴定した際のpH変化は以下の4つに分類される 最初のpH 中和点までのpH 中和点でのpH 中和点以降でのpH 下の式は弱酸の濃度が K a {\displaystyle K_{a}} の1000倍以上ある場合にのみ成立する。もしそうでない場合は、近似を用いずより正確に計算を行うRICEチャート(英語版)が必要となる。以下はRICEチャートの簡略化である。 1. 最初のpHは弱酸の溶液の場合だいたい以下の式で表される。 p H = − log K a F {\displaystyle \mathrm {pH} =-\log {\sqrt {K_{a}F}}} K a {\displaystyle K_{a}} は酸解離定数、 F {\displaystyle F} は酸溶液の濃度である。 2. 中和点までのpHは弱酸と共役塩基(英語版)の生成量による。下の式に従って計算を行うことで任意点でのpHを計算できる(以下は ヘンダーソン・ハッセルバルヒの式の変形である) pH = p K a + log ( n OH − added n HA initial − n OH − added ) {\displaystyle {\ce {pH}}={\ce {p}}K_{a}+\log({\frac {n_{\ce {OH^{-}\ added}}}{n_{\ce {HA\ initial}}-n_{\ce {OH^{-}\ added}}}})} ただし p K a {\displaystyle \mathrm {p} K_{a}} は弱酸の酸解離定数の対数をとって負の記号をつけたもの(酸解離指数) n O H − {\displaystyle n_{OH^{-}}} は溶液に加えられた強塩基のモル数 n H A {\displaystyle n_{HA}} は滴定前にあった弱酸のモル数 である。 対数の真数部の、分子と分母が等しい場合( n OH − added = n HA initial − n OH − added {\displaystyle {n_{\ce {OH^{-}\ added}}}={n_{\ce {HA\ initial}}-{n_{\ce {OH^{-}\ added}}}}} )、真数は1に、対数は0になる。このときのpHはpKaと等しくなり、中和点までの半分 3. 中和点では、弱酸は完全に中和され、その共役塩基に変化している。pHは7より大きく、以下の式より求められる。 p H + p O H = 14 {\displaystyle \mathrm {pH+pOH=14} } K a K b = 10 − 14 {\displaystyle K_{a}K_{b}=10^{-14}} 中和点において C a V a = C b V b {\displaystyle C_{a}V_{a}=C_{b}V_{b}} 上の3つの関係を用いると、中和点でのpHを求める式は次のようになる。 p H = 14 + log C a C b K w ( C a + C b ) K a {\displaystyle \mathrm {pH} =14+\log {\sqrt {\frac {C_{a}C_{b}K_{w}}{(C_{a}+C_{b})K_{a}}}}} ただし C a {\displaystyle C_{a}} は酸の濃度、 C b {\displaystyle C_{b}} は塩基の濃度である。 また K w {\displaystyle K_{w}} は水の電離定数、 K a > {\displaystyle K_{a}>} は酸解離定数である。 酸が塩基によって中和された際のpHは酸と塩基の強さに依存する。酸と塩基の強さが同じ場合は中和点のpHは7になる。 4. 中和点以降では溶液には2種類の塩基が含まれている。酸の中和によって生じた弱酸の共役塩基と過剰に滴下された強塩基である。しかし、滴定液は中和によって生じた共役塩基より強い塩基であるから、溶液のpHは強塩基によって決まる。従って、溶液のpHは下式によって求められる。 p H = 14 + log C b V b − C a V a ( V a + V b ) {\displaystyle \mathrm {pH} =14+\log {\frac {C_{b}V_{b}-C_{a}V_{a}}{(V_{a}+V_{b})}}} 以上のpH変化は正確に一つの式で表すことができる。 ϕ = C b V b C a V a = α A − − [ H + ] − [ OH − ] C a 1 + [ H + ] − [ OH − ] C b {\displaystyle \phi ={\frac {C_{b}V_{b}}{C_{a}V_{a}}}={\frac {\alpha _{{\ce {A^-}}}-{\frac {{\ce {[H^+] - [OH^-]}}}{C_{a}}}}{1+{\frac {{\ce {[H^+] - [OH^-]}}}{C_{b}}}}}} α A − = K a [ H + ] + K a {\displaystyle \alpha _{A^{-}}={\frac {K_{a}}{[{\ce {H}}^{+}]+K_{a}}}} ϕ {\displaystyle \phi } は滴定の進度(中和点より手前ではφ < 1、中和点ではφ = 1、中和点以降ではφ > 1である) C a , C b {\displaystyle C_{a},C_{b}} は酸と塩基の濃度 V a , V b {\displaystyle V_{a},V_{b}} は酸溶液と塩基溶液の体積 α A − {\displaystyle \alpha _{{\ce {A^-}}}} は電離した弱酸の割合 K a {\displaystyle K_{a}} は酸の電離定数 [ H + ] , [ OH − ] {\displaystyle {\ce {[H^+], [OH^-]}}} はH+およびOH–の濃度 この式は少々複雑ではあるが、中和滴定でのpH変化を一つの式で表している。
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