中和滴定
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/16 14:30 UTC 版)
酸と塩基 |
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中和滴定(ちゅうわてきてい)は濃度未知の酸や塩基を濃度既知の酸や塩基で中和して酸や塩基の濃度を決める操作(滴定)である。酸塩基滴定(さんえんきてきてい、acid-base titration)ともいう。
この操作によって未知の酸や塩基の溶液の定量分析を行うことができる。この滴定には酸と塩基の中和反応を用いる。pKa(酸解離指数)やKa(酸解離定数)をpHのグラフから求めることもできる。また、化学物質の純度を決めるのにも用いられる。
アルカリ滴定と酸滴定
アルカリ滴定(Alkalimetry)と酸滴定(acidimetry)は中和反応に基づく容量分析の一種である。 アルカリ滴定は塩基(アルカリ)の濃度を決定するのに特化した分析法である。一方酸滴定は酸の濃度を決定するための分析法である[1]
必要な装置
滴定に必要な装置は以下のとおり。
- ビュレット
- 白い板 – 溶液の色の変化をみるために必要である
- ピペット
- 酸塩基指示薬 - 反応物によって変える必要がある
- 三角フラスコまたはコニカルビーカー
- 滴定液と滴定装置(濃度既知の標準溶液、炭酸ナトリウムがよく用いられる)
- 分析物と滴定物(滴定で濃度を調べる溶液)
方法
滴定前に適切な指示薬を選ぶ必要がある。等量点は滴定に用いる酸と塩基の種類によって変わり、等量点におけるpHはおおよそ次のようになっている。
弱酸と弱塩基が中和反応する場合、中和点はその酸と塩基の解離定数の大小による。もし両者の平衡定数が同程度なら、中和点は中性(pH=7)付近になる。しかし、中和点付近の色の変化が明瞭ではないため弱酸を弱塩基で(あるいは弱塩基を弱酸で)滴定することは稀である。
指示薬の色が変わる点を終点と呼ぶ。終点のpH付近を変色域にもつ指示薬を使うのが望ましい。
まず、ビュレットを標準溶液で、ピペットを濃度未知の溶液で共洗いし、コニカルビーカーを蒸留水や脱イオン水などの純水で洗う。
次に、一定体積の濃度未知の溶液をピペットでとり、コニカルビーカーに移す。この時コニカルビーカーに少量の指示薬を加える。
その後、濃度既知の溶液をコニカルビーカーに落としていく。この段階までに、未知の溶液の中和に必要な溶液量を概算しておく。コニカルビーカー内の溶液の色が変わった点を終点とし、その点でのビュレットの読みを記録しておく。これを1回目の滴定値とする。
同じ滴定を少なくとも3回行い、平均をとって値の正確さを向上させる。ビュレットの読みの始点と終点の読みを記録しておく。終点の値から始点の値を引いて滴定に要した溶液の体積を求める。終点はコニカルビーカーの液の色が変わり、元に戻らなくなった点とする。
指示薬は、強酸と強塩基の中和滴定ではブロムチモールブルー、弱酸と強塩基の中和滴定ではフェノールフタレイン、強酸と弱塩基の中和滴定ではメチルオレンジを用いる。ただし、塩基のpHが13.5より大きく、酸のpHが5.5より大きい場合アリザリンイエローが指示薬として用いられる。一方、酸のpHが0.5より小さく、塩基のpHが8.5より小さい場合はチモールブルーが用いられる。
弱酸の滴定
弱酸の溶液を強塩基で滴定した際のpH変化は以下の4つに分類される[2]
- 最初のpH
- 中和点までのpH
- 中和点でのpH
- 中和点以降でのpH
下の式は弱酸の濃度が
3. 中和点では、弱酸は完全に中和され、その共役塩基に変化している。pHは7より大きく、以下の式より求められる。
終点前のメチルオレンジ