弓騎兵戦術
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/03 03:52 UTC 版)
「パルティアンショット」の記事における「弓騎兵戦術」の解説
「パルティア#軍事」も参照 軍事分野におけるパルティアンショットは、戦いの最前線に出ては馬上で後ろ向きに矢を放ってから後退することを繰り返す戦闘方法である。 パルティアは遊牧民が政権中核を構成した国家であり、弓と馬の扱いに秀でていた。そのため軍隊の主力にも軽騎兵を採用しており、機動力を生かした戦いを得意としていた。軽騎兵は槍や剣ではなく弓で武装し、一定の距離を保ち矢を放って敵を苦しめた。こうした軽騎兵を効果的に活用するためにパルティア軍(英語版)は接近した白兵戦につながる会戦をできるだけ避け、戦闘になっても会戦で決着をつけようとはせずにすぐに退却した。退却するパルティアの部隊が追撃する敵に逃げながら矢を放つと、その損害に敵が浮き足立ったり、高速移動に敵の戦列が対応できずに戦闘隊形が乱れる。すると、パルティアの部隊は踵(きびす)を返して攻勢に転じた。こうした戦法は、パルティア独自のものではなく、スキタイ、匈奴、モンゴル帝国といった遊牧国家の戦争に共通したものであるが、ヨーロッパに古典文明を伝えた古代ローマが本格的に対峙した遊牧民勢力がパルティアであったため、ヨーロッパ人にとって遊牧民の戦法は、パルティア的なものとして記憶されるようになった。このようなパルティアの戦い方から、逃げながら馬上から振り返りざまに打つ弓矢の騎撃を「パルティアンショット」と呼ぶようになった。 こうした馬上の弓術は、パルティアの後継政権であるサーサーン朝の帝王の狩猟図像などに記録されているものを、今日でも見ることができる。 なお、日本の騎射では、通常的ではないが、後方からの前方射撃への対処としてパルティアンショットに似た後方射撃の技術「押し捻り(おしひねり)」が存在し、戦況の次第ではこれを使用した。
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