対策の歴史
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/11 01:36 UTC 版)
病原体に対する的確で有効な対策として、最も古いものはジェンナーが種痘法を開発したことであるが、彼はその機構についての理解がなかったので、応用はできなかった。ジョゼフ・リスターによる消毒法は、手術等の際の細菌感染による敗血症などの発生を抑えるのには大きな効果があったが、これも一般の感染症に対応できるものではない。 病原体が発見されたことで、対策を講じるべき対象がはっきりしたわけであるが、実際に具体的な対応策が発見されたわけではない。パスツールのカイコの微粒子症にせよ、コッホによる炭疽菌の発見にせよ、ひとまず考えられたのは、病原体をもつ個体やそれに触れた周囲のものを燃やす、あるいは埋めるという対策であって、これはそれ以前に行なわれていた対応とほとんどかわらないものである。わずかにコッホによる、炭疽菌は低温では働かなくなるとの発見が合理的裏付けとなったにすぎない。 本格的に役に立つ対応策の最初のものは、パスツールによる炭疽菌ワクチンの開発である。これは、根本的には種痘と同様のものだが、まず弱毒化させた病原体を接種して、動物体に免疫をつけさせるという理論的裏付けができたので、応用が利いた。彼はその後狂犬病やニワトリコレラのワクチンも開発した。この技術によって多くの伝染病に対して予防接種で対抗することが可能となった。また、北里らによる血清療法は、この原理に基づきながら、応用の幅を大きく広げたものである。 ワクチンは人間の生体防御の機構を利用したものであるが、これに対して病原体を直接に攻撃対象とする方法として発見されたのがペニシリンである。1929年にアレクサンダー・フレミングは、アオカビが細菌の生育を阻害するのを観察し、その原因の化学物質を取り出し、これにペニシリンと名を付けた。この物質は特にグラム陽性菌には強い効果を示した。これに刺激を受け、微生物の分泌する抗生物質探しが行われるようになり、放線菌から発見されたストレプトマイシンを始め、多くのものが発見、使用されるようになった。
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