密閉ピット
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/08/16 01:10 UTC 版)
密閉ピットはピットの周囲を金属で覆って開けられないようにした上で核兵器の中に収めたものである。これは周囲環境から核物質を保護し、火災や小爆発が起きた場合でも核物質が放出される懸念を小さくできる。最初に密閉ピットが用いられたのはW25核弾頭である。ピットを覆う金属はステンレス鋼のことが多いが、ベリリウムやアルミニウム、場合によってはバナジウムも使われる。ベリリウムは割れやすく毒性がある上に高価だが優れた中性子反射体でもあるので、ピットの臨界量を減らす必要がある場合には魅力的な選択肢となる。この場合にはプルトニウムとベリリウムの間にアルファ粒子を吸収する素材の層を設けなければならない。これはプルトニウムやアメリシウムなどが崩壊して生ずるアルファ粒子がベリリウムと反応して中性子を放出してしまうからである。ベリリウムをタンパー兼中性子反射体とするのは1950年代中頃から始まり、ロッキーフラッツ工場で粉末から圧縮成形した素材を加工して作られていた。 より現代的な設計でも中空ピットが用いられている。よく紹介されるプルトニウム製ピットはおおよそボウリング球ぐらいの大きさと重さで適切な金属にプルトニウムが内張りされた球殻であり、ブースト型核分裂兵器であればさらに三重水素を注入するための導管が設けられている。大きさは大抵テニスボールからボウリング球程度で正確に球形に仕上げられている。核分裂性物質の重量と同位体組成は兵器の性能に大きく影響することからクラス分けされている。中空ピットは半球を溶接してあり、ブースト用三重水素を注入するための導管がろう付け (外殻がベリリウムやアルミニウムの場合)か電子ビーム溶接またはTIG溶接 (ステンレス外殻の場合) で取り付けられている。 ベリリウム外殻のピットは脆くて割れやすく温度変化に敏感で、塩分や湿気で腐食されやすいため清掃が必要である。また、作業者が有毒なベリリウムに曝露することになる。 旧型のピットでは約 4 - 5 キログラムのプルトニウムが使用されていたが、新型のピットでは約 3 キログラムになっている。
※この「密閉ピット」の解説は、「ピット (核兵器)」の解説の一部です。
「密閉ピット」を含む「ピット (核兵器)」の記事については、「ピット (核兵器)」の概要を参照ください。
- 密閉ピットのページへのリンク