宿主との相互作用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/21 14:43 UTC 版)
内生菌は、病原菌や寄生生物を抑制することで宿主に利益を与えていると考えられている。内生菌は宿主の体内空間の占有を巡って病原菌と競合し、病原菌の繁殖を防ぐ。これを障壁効果(barrier effect)と呼ぶ。加えて、内生菌は、病原菌を含む競合者の生育を阻害する化学物質を産生する。内生菌は、宿主の防御機構に関わる植物遺伝子の発現量を増やし、病原菌に対する抵抗性を高める。 内生真菌および細菌は植物の生長を促進することが証明されている。内生真菌の存在は葉の水分損失率を大きくする。しかし、内生細菌は草食動物による食害といった生物的ストレス、あるいは塩害、旱魃、酷暑といった物理的ストレスに対する耐性を高める。内生菌は、リン酸や窒素といった栄養素の植物への取り込みを助け、植物の生長を促進させる。 植物と共生する窒素固定細菌はマメ科植物と根の根粒組織で共生する根粒細菌が古くからよく知られているが、こうした共生組織をつくらずに植物体で内生菌としてふるまっている細菌の中にも窒素固定細菌がいて、宿主に窒素化合物を供給している事が確認されている。栽培植物の中ではサトウキビ、パイナップル、サツマイモから高い窒素固定活性が知られている。 宿主に対する効果には利益もあれば損害もある。内生菌の植物生育促進効果は正の効果と負の効果のバランスの結果である。また、内生菌は生物的・物理的ストレスに対する耐性の向上効果を宿主に与えるが、植物にとって適切な内生菌とその耐性向上効果は生息地や植物種によって異なる。Redmanらは、生息地で要求される生物的・物理的ストレス耐性に有益な内生菌を獲得することが植物にとって重要であるとする生息地適応共生説を提唱した。この仮説において、内生真菌および細菌は、植物が生存や繁栄するための植物体内の機能的微生物コミュニティを構成していると考えられている。
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