実相寺のイチョウとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 文化 > 国指定文化財等データベース > 実相寺のイチョウの意味・解説 

実相寺のイチョウ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/02 07:28 UTC 版)

実相寺のイチョウ。2022年9月8日撮影。

実相寺のイチョウ(じっそうじのイチョウ)は、岩手県二戸郡一戸町大沢の実相寺の境内にある国の天然記念物に指定されたイチョウである[1]

樹高は約25 m(メートル)、目通り周囲は約3 mと、イチョウとしてはごく一般的な大きさであるが、雄木(雄株)であるにもかかわらず幹の一部に生じた小さな枝に雌花を咲かせ、ブドウの房のように銀杏を付ける珍しい性質をもつイチョウとして近隣の人々に知られている。学術上貴重な例であるとして[2]1938年昭和13年)12月14日に国の天然記念物に指定された[1][3][4]

国の天然記念物に指定されたイチョウの中で実相寺のイチョウと同様に、元来雄株であるのに雌花が咲いて銀杏が実るイチョウは、同じ岩手県の南部にある東和町(現花巻市)の銀杏岡のイチョウが知られていたが[5]台風の強風により大枝が折れる被害を受け、1973年(昭和48年)に国の天然記念物の指定が解除されている。また、後天的なものとしては山梨県南巨摩郡身延町八木沢のオハツキイチョウ(雄株)が、2011年平成23年)に突然銀杏の実を付けた事例もある[6]

解説

実相寺の
イチョウ
実相寺のイチョウの位置
実相寺山門と実相寺のイチョウ。2022年9月8日撮影。

実相寺のイチョウは岩手県北部の二戸郡一戸町の中心市街地にある浄土宗寺院、実相寺の山門を潜った左手境内に生育している[3][7]。実相寺は馬淵川の東岸(右岸)の旧国道4号(現岩手県道274号二戸一戸線)から東側へ150 m ほど入った山の麓に位置しており、境内には一戸町の運営する一戸保育所があり、国の天然記念物に指定されたイチョウの木も保育所の建物や遊具などに接して生育している[8]

イチョウは雌雄異株であるが、実相寺のイチョウは雄木(雄株)であり、本来であれば銀杏は付けないが、主幹から分岐する太い枝の中ほどから出ている小さな枝に、毎年開花してブドウの房状の実をつけることが知られており[7]の変異の起こる点で極めて貴重であり[9]、学術上有益なものであるとして[4]1938年昭和13年)12月14日に国の天然記念物に指定された[1][3]

樹木の大きさは資料により数値が異なるが、1969年(昭和44年)の計測では、根元周囲 3.84 m、目の高さでの周囲が3.05 m、樹高は27 m程であったという[8][7]1983年(昭和58年)の計測では、樹高約21 m、目通り周囲は3.38 m、一戸町教育委員会が現地に設置した解説板によれば、樹高約25 m、目通り幹囲は約3.3 mで、樹齢は約280年と推定されている[10]。また、大日本山林会1962年(昭和37年)に出版した『日本老樹名木天然記念樹』によれば、現地での言い伝えとして100年ほど前に林源八という人物が植えたものというが、来歴や樹齢の正確な所は不詳である[11]

主な枝は主幹の地上約3.5 mの高さからホウキのように分岐して張り出しており、その中で南東側に延びている1枝の中ほど、地上から11.9 mの高さ付近に、花を咲かせ銀杏を付ける問題の小枝がある[3]。この小枝はわずか50 cmセンチメートルほどの長さで、結実する銀杏の数も毎年ほぼ一定し15粒から30粒ほどであるが[11]、この小枝は天然記念物指定時の1938年(昭和13年)からほとんど肥大せず約50 cmのままで、成長が極めて遅いことも不思議な点であると指摘されている[3]

今日では園芸技術の発達により、銀杏を収穫する目的でイチョウの雄株に雌株を接ぎ木することもあるが、実相寺のイチョウは自然の状態であり、一種の天然の接ぎ木であるとも言え、一戸町ではクローン技術により根付けした3本を生育している[10]

交通アクセス

所在地
  • 岩手県二戸郡一戸町大沢12
交通

出典

  1. ^ a b c 実相寺のイチョウ(国指定文化財等データベース) 文化庁ウェブサイト、2022年9月10日閲覧。
  2. ^ 菅原(1995)、p.473。
  3. ^ a b c d e 菅原(1995)、p.474。
  4. ^ a b 本田(1957)、p.30。
  5. ^ 文化庁文化財保護部監修(1971)、p.86。
  6. ^ 米山正寛 (2011年11月26日). “イチョウの性転換!雄木に銀杏が実った”. 朝日新聞社. https://webronza.asahi.com/science/articles/2011112400011.html 2022年9月10日閲覧。 
  7. ^ a b c 村井(1972)、pp.81-82。
  8. ^ a b 一戸町(1986)、pp.845-846。
  9. ^ 文化庁文化財保護部監修(1971)、p.87。
  10. ^ a b 現地解説板(平成14年3月29日、一戸町教育委員会による設置)
  11. ^ a b 大日本山林会(1962)、p.343。

参考文献・資料

  • 加藤陸奥雄他監修・菅原亀悦、1995年3月20日 第1刷発行、『日本の天然記念物』、講談社 ISBN 4-06-180589-4
  • 文化庁文化財保護部監修、1971年5月10日 初版発行、『天然記念物事典』、第一法規出版
  • 本田正次、1957年12月25日 初版発行、『植物文化財 天然記念物・植物』、東京大学理学部植物学教室内 本田正次教授還暦記念会 doi:10.11501/1376847 NDLJP:1376847 NCID BN0634690X
  • 三浦伊八郎、本田正次、小野陽太郎、林弥栄、1962年12月10日 発行、『日本老樹名木天然記念樹』、大日本山林会
  • 村井三郎(植物担当)他、1972年7月15日 初版発行、『岩手の自然 名勝と天然記念物を訪ねて』、社団法人 岩手県文化財愛護協会 岩手県立図書館内
  • 一戸町町誌編纂委員会 編纂、1986年8月1日 発行、『一戸町誌 (下巻)』、一戸町 全国書誌番号:87025519

関連項目

外部リンク

座標: 北緯40度13分16.5秒 東経141度17分59.8秒 / 北緯40.221250度 東経141.299944度 / 40.221250; 141.299944



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「実相寺のイチョウ」の関連用語

実相寺のイチョウのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



実相寺のイチョウのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
文化庁文化庁
Copyright (c) 1997-2025 The Agency for Cultural Affairs, All Rights Reserved.
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの実相寺のイチョウ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS