定常状態法とは? わかりやすく解説

反応速度論

(定常状態法 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/27 00:13 UTC 版)

反応速度論(はんのうそくどろん、英語: chemical kinetics)とは、反応進行度の時間変化(速度)に関する物理化学の一分野である。物体の速度を扱う力学との類推で、かつては化学動力学と呼ばれていた。反応速度論の目的は反応速度を解析することで、反応機構や化学反応の物理科学的本質を解明することにあった。今日においては原子あるいは分子の微視的運動状態は、巨視的な反応速度解析に頼ることなく、量子化学などの理論に基づき計算化学的な手法で評価する分子動力学によって解明できるようになっている。それゆえ、今日の反応速度論は、学術的真理の探求のための手法というよりも実際の化学反応を制御するための基礎理論として利用されている。

なお、反応速度の求め方については記事、反応速度に詳しい。

反応速度のモル濃度依存性

化学において、反応速度が系統的に研究されたのは19世紀中旬以降であり、1850年ドイツの化学者ウィルヘルミーによる酸触媒存在下にショ糖加水分解反応の速度についての研究が反応速度研究の先駆けとされる。ウィルヘルミーは加水分解によりショ糖の旋光度が右旋性から左旋性へと連続的に変化する性質を利用して物質量変化を観測した。その結果、実験条件を一定にすると反応速度はショ糖濃度に比例することを見出した(反応速度・擬1次反応を参照)。

1862年にはフランス人化学者マルセラン・ベルテロとL・サンジルが酢酸エチルのエステル化反応と加水分解反応の反応速度を解析して、酢酸とエタノールから酢酸エチルが生成する速度は酢酸濃度とエタノール濃度の積に比例し(反応速度・2次反応を参照)、酢酸エチルが加水分解する速度は酢酸エチル濃度に比例する(反応速度・擬1次反応を参照)ことを実験的に見出した。

質量作用の法則(化学平衡の法則)

1864年ノルウェーグルベルグ英語版とP・ボーゲは、反応速度について理論構築を試みた。化学反応が物質間のある種の親和力により引き起こされ、その親和力は反応する分子の周囲にある物質量に比例するとして反応速度を定式化して、化学平衡の関係式を導いた。

反応式

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    出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/23 08:57 UTC 版)

    反応速度論」の記事における「定常状態法」の解説

    1922年イギリスのフレデリック・リンデマン(英語版)やデンマークJ・A・クリスチャンセン (J. A. Christiansen) は、次のように衝突モデル拡張することで1次反応説明付けた。つまり、非弾性衝突自体対称過程あり内エネルギー増大した分子が再衝突により内部エネルギー運動エネルギーとして奪い去られることは可能である。内部エネルギー増大した励起分子A*定常状態分子Aとが変換する速度に対して励起分子A*目的1次反応引き起こす速度十分にいならばA* とAとの間に平衡存在していると仮定することができる。 A + A ⇌ k − 1 k 1 A ∗ + A {\displaystyle {\ce {{A}+{A}<=>[k_{1}][k_{-1}]{A^{\ast }}+{A}}}} A ∗ → k 2 X {\displaystyle {\ce {{A^{\ast }}->[k_{2}]{X}}}} 化学平衡式の定義より k 1 [ A ] 2 = k − 1 [ A ∗ ] [ A ] {\displaystyle k_{1}[{\rm {A}}]^{2}=k_{-1}[{\rm {A}}^{*}][{\rm {A}}]} であるから、 [ A ∗ ] = k 1 k − 1 [ A ] {\displaystyle [{\rm {A}}^{*}]={\frac {k_{1}}{k_{-1}}}[{\rm {A}}]} 生成したA*一定速度でXへと反応するならば、反応速度v は励起分子モル濃度[A*]で表されるので、 v = d [ X ] d t = k 2 [ A ∗ ] = k 2 k 1 k − 1 [ A ] {\displaystyle v={\frac {\mathrm {d} [{\rm {X}}]}{\mathrm {d} t}}=k_{2}[{\rm {A}}^{*}]={\frac {k_{2}k_{1}}{k_{-1}}}[{\rm {A}}]} となり、1次反応速度式が導出される。 このようにクリスチャンセンが開発した励起分子反応中間体生成平衡存在して反応中間体等の濃度時間変化しないと仮定して反応速度式近似する手法は定常状態法(ていじょうじょうたいほう、method of steady state)と呼ばれる

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    「定常状態法」を含む「反応速度論」の記事については、「反応速度論」の概要を参照ください。

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