奇形魚問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/06 14:52 UTC 版)
他には、2000年代に入り奇形魚が生まれるようになってきている。 地元の漁師の間では以前から言われていたが、海苔産業が海苔養殖の際に使用する酸処理剤(クエン酸、リンゴ酸を原料とする)が原因であるとする意見がある。東北大学の江刺洋司は、「酸処理剤が大量の植物プランクトンを発生させ、有明海の酸素を少なくしている。酸素濃度が低いと、成長に必要な核酸やたんぱく質などが通常通りできずに、『奇形』の魚が生まれる可能性があるというわけです。そればかりか、低酸素が進み酸欠になると有毒な硫化水素が発生し、海の低層の魚を全滅させる死の海となってしまう」として、酸処理剤によって奇形魚が生まれていると指摘した。 水産大学校の鬼頭鈞はこれに対し、「1-2%であれば、論議の対象とならない。そして、酸処理剤は約1週間でほぼゼロの水準に分解され、これが夏場の赤潮に影響するとも考えにくい。漁獲量が減ったのは(漁業)技術の革新によって、大量に漁獲できるようになったのが大きい」と反論した。江刺はこれに対し「有明海はわずかな変化も影響する繊細な海域。1-2%でも影響は大きい」として再反論を行っている。 所管官庁である水産庁は、影響は無いとはしながらも、使用量は減らした方が良いというスタンスを取っている。 2015年3月5日、福岡県、熊本県、佐賀県、長崎県の漁業者ら約200人が、殺菌剤の使用を禁止しない国に対して損害賠償を求める訴訟を熊本地方裁判所に起こした。
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