大統領代行と大統領
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/27 14:50 UTC 版)
「アメリカ合衆国大統領の継承順位」の記事における「大統領代行と大統領」の解説
合衆国憲法第2条第1節は、以下のように規定している。 In case of the removal of the President from office, or of his death, resignation, or inability to discharge the powers and duties of the said office, the same shall devolve on the Vice President … until the disability be removed, or a President elected. 大統領が免職、死亡、辞任し、または同職の権限および義務を遂行する能力を失った場合は、障害が除去されるか、または大統領が選任されるまでの間……それは副大統領に帰属する。 当初この規定は、「それ (the same)」が「同職 (the said office)」を指すのか、それとも「同職の権限および義務 (the powers and duties of the said office)」のみを指すのかという問題を未解決のまま残した。一部の歴史家は、大統領の権限および義務を遂行する間、副大統領は副大統領のままであるということが制定者らの意図であったと主張している。しかし反証も多く存在しており、中でも最も強制力があるのは憲法自体の第1条第3節である。条文には次のように書かれている。 The Vice President of the United States shall be President of the Senate, but shall have no vote, unless they be equally divided. 合衆国の副大統領は、上院の議長となる。ただし、可否同数の場合を除き、表決には加わらない。 The Senate shall choose their other officers, and also a President pro tempore, in the absence of the Vice President, or when he shall exercise the office of President of the United States. 上院は、議長を除く上院の他の役員を選任し、また副大統領が欠席するかまたは合衆国大統領の職務を行う場合には、仮議長を選任する。 この条文は、副大統領の継承に関して大統領の「職務」と単なる「権限」のいずれが副大統領に移るのか、という仮定的問題に解答を与えているように見える。このように、修正第25条は、大統領の障害に関する有益な新規定を加えたことを除いては、単に既存の先例の有効性について言い直し、再確認したに過ぎない。しかし当然ながら、それが初めて検証された際に誰もがこの解釈に同意したわけではなかった。そして、修正第25条が未だ存在しなかった時代に米国史上初めて大統領を継承したジョン・タイラーの先例が、以後尊重されてきたのである。 1841年にウィリアム・ヘンリー・ハリスン大統領が死亡した際、ジョン・タイラー副大統領はしばし躊躇した後、大統領就任の宣誓をすると、自身は単なる大統領代行でなく大統領なのであるとの立場をとった。彼は、「アメリカ合衆国大統領代行」に送られる書簡さえも突き返したのである。 この先例はその後も続き、「大統領が免職、死亡、または辞職した場合、副大統領が大統領となる」ことを明記する修正第25条の第1節によって明確化した。この修正条項は、副大統領以外の職員が同じ状況下で大統領代行でなく大統領になることができるか否かについては明記していない。しかし、大統領継承法はその条項中で、就任するいかなる者も「大統領の役を演じる」に過ぎない―たとえ彼らが長年その役割を「演じた」としても―ということを明らかにしている。かくて副大統領を務める者だけが、これまで「アメリカ合衆国大統領」の称号を継承することができたのである。
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