堀辰雄の散歩コース
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/01 00:21 UTC 版)
『美しい村』には、主人公の「私」が毎日散歩した小径から見た風景や野薔薇などが描かれ、「私」が少女にその地図を見せる場面があるが、堀自身も、その後軽井沢に転々と住まいを移していた頃、手製の村の地図を作っており、室生犀星をはじめとした友人宛ての手紙に添えて送っている。『美しい村』の堀の散歩コースをたどると、堀が宿泊していた「つるや旅館」(本町通りの一番奥まったところにある)を基点にしておもに4本の道筋がある。それらをまとめると以下のようになる。 「つるや旅館」の北方向にあたる愛宕山へ向かう道「つるや旅館」から本町通りを少し下り、福音教会の傍の横町から入って行くコース。道の両側は、旧軽井沢でも最も早くに別荘地として開けた場所である。愛宕神社に通ずる参道がある。西洋人たちが “Organ Rocks”と呼んだ天狗岩が見える愛宕山への散歩道。 旧碓氷峠への道「つるや旅館」から芭蕉の句碑を右に見て、旧中山道の坂を上って行くコース。矢ヶ崎川の渓流に架かる二手橋を渡ったところで道が二筋に別れ、右手は旧碓氷峠に向かうハイウェイとなる。左手は、堀辰雄が最初に軽井沢に住んだ家があった貯水池に通ずる道である。二手橋から200メートルほど遡った渓流沿いに室生犀星の文学碑がある。 サナトリウムの道軽井沢銀座(本町通り)の中心部にあたる観光会館からテニスコート沿いに東へ進むコース。矢ヶ崎川を越えると、万平ホテルや釜の沢の別荘地帯に入り込んで行く。釜の沢を過ぎるあたりから、矢ヶ崎川の流量が急に減り、おだやかな野の川となっている。この川沿いの林の中に建っているのが、かつてサナトリウムだった「旧軽井沢ヴィラ」である。この川べりの道(「ささやきの小径」)が、堀が「サナトリウム・レイン」と呼んでいた道で、アカシアの木がたくさん並んでいる。この元サナトリウムはニール・ゴードン・マンローが院長をしていた病院で、「マンロー病院」とも呼ばれていた。 水車の道(Water Wheel Road)軽井沢銀座の裏手にあたる北裏通りのコース。現在、水車はない。もと水車のあった軽井沢聖公会(ショーハウス、ショーハウス記念館)がある。堀が愛した聖パウロカトリック教会から、軽井沢銀座に通ずる教会通りがある。水車跡の近くには、「悲しい別離を余儀なくされた女友達」のヴィラ(元片山広子の別荘)がある。また、この道は、『風立ちぬ』の最終章の舞台ともなっている。
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