地震予知は出来ない
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 08:28 UTC 版)
「何月何日の何時に、何処でどれだけの規模の地震が発生する」というような、従来の定義における「短期予知」や「直前予知」、また新しい定義による警報につながるような「地震予知」については、現在の科学技術はそのレベルに到達しておらず、日本地震学会は「現時点で地震予知を行うのは非常に困難」という見解を発表しているが、将来実現する可能性にも含みを残している。IASPEIの委員会である「市民保護のための国際地震予測に関する検討委員会(CCEP)」の2009年の報告書でも、同様の見解が発表されている。 地震予知が困難とされる背景として、前兆を捉えるためには十分な密度と頻度で観測を行わなければならず、得られたデータを迅速に処理するためには多くの予算と専門家を必要とすること、また経験的な事実として前兆の現れ方は地震ごとにかなり異なるため規則性に乏しいと考えられることなどが挙げられる。日本でも、測定器を置いて長期観測を行っていても、大地震が起こって前兆が記録される機会は少なく、大地震の震源域のごく近くで観測が行われていても異常が認められなかったという例は少なくない。また傾向として、前兆として報告された事例の多くが事後調査により判明したもので、事前に報告されるものは少ないという見方もある。 地震前に広く見られると言われている動物や植物などの前兆現象(宏観異常現象)を用いた研究もあるが、その多くは科学的な説明が十分でないことから、例えば日本の公的機関である気象庁や日本地震学会はこうした種類の前兆を実用的な地震予知に利用する事は困難だと説明している。1例として地震雲の場合を挙げると、研究報告の例はあり、無いと断言することは難しいとされるものの、そのメカニズムを十分に説明する仮説はないとされているほか、経験的・統計的な観点からも客観的評価が不十分とされ、十分な検証が必要であるとされている。 また、仮に地震予知が可能となった場合に、どのように公表していくか、責任の所在をどうするべきかという問題もある。 一方で、従来「長期予知」と呼ばれていた数十年以上の単位で行う確率論的予測(長期的な発生確率)は、地震危険度として実用化されている。ただし、これはあくまで地震の長期的リスクを示したものに過ぎず、警報のような性質は持たない。
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