台湾当局への引き渡し案
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/19 01:31 UTC 版)
「潘暁穎殺人事件」の記事における「台湾当局への引き渡し案」の解説
逃亡犯条例改正案を撤回したことで、香港当局は陳同佳を台湾に送り込んで裁判を受けさせるという選択肢をほぼ失ってしまった。釈放される数日前の10月18日、香港特別行政区政府は声明を発表し、台湾における陳同佳の犯罪容疑については管轄権を持たず、刑期を延長する理由もないとし、釈放後は自由の身となる可能性があることを示唆した。一方、声明によると、陳同佳は台湾当局に自首する意思を表明しており、香港特別行政区政府に対し、適切な手配をするよう要請しているという。 台湾は当初、香港との間で司法支援協定を締結して事件に関する重要書類を入手する必要があることを理由に、逃亡犯条例改正案を拒否していた。また、民主進歩党政権下の中華民国政府は、陳同佳の引き渡しに懐疑的な見方を示しており、香港との正式な交渉経路を拒否することで、中華民国としての主権の主張を薄めようとする中国の策略ではないかとの見方を示している。中華民国総統の蔡英文は、以前から香港で引き渡し改正案に反対する抗議者を支持していたが、2020年中華民国総統選挙が近づくにつれ、主権問題に敏感になっていたのではないかと疑われている。野党の中国国民党は与党の民主進歩党の対応に対して、蔡英文政権が司法問題を政治化していると非難した。香港当局は台湾の懐疑論を「ありえない」と否定した。 釈放の前日、台湾はそれまでの姿勢を翻し、陳同佳の受け入れを申し出たが、台湾の官憲を香港に派遣し陳同佳に同行させることを要求した。これは台湾の法的自主権の拡大を意味するが、香港側はこの申し出を拒否し、台湾当局には香港での法執行力がないことを強調した。 10月23日に釈放された日、陳同佳は潘暁穎の遺族と香港社会に謝罪し、最終的に彼が香港で起こした騒動についても言及し、許しを求めた。香港聖公会教省秘書長管浩鳴(中国語版)牧師は、釈放当日に同行するため台湾行きの航空券を購入していたが、釈放の時機が合わず搭乗できなかった。管浩鳴牧師は、この事件が政治的に微妙な問題となったため、陳同佳の台湾への出頭は総統選挙が終わるまで延期すると表明した。その間、台湾の警察は陳同佳の事件全般を扱う臨時の班を設置し、陳同佳の査証申請、到着予定、その他の関連手配などを処理するための特別な「シングルウィンドウ・システム(英語版)」を設けた。新型コロナウイルス感染症の世界的流行の影響で台湾の境界が閉鎖されているため、陳同佳は香港に留まり警察の保護を受けている。
※この「台湾当局への引き渡し案」の解説は、「潘暁穎殺人事件」の解説の一部です。
「台湾当局への引き渡し案」を含む「潘暁穎殺人事件」の記事については、「潘暁穎殺人事件」の概要を参照ください。
- 台湾当局への引き渡し案のページへのリンク